【+2】ラリー

話も短いし怪異自体もさほど凄いものでもないが、作品全体の印象はよい。
「ぱさっ」という擬音をリフレインすることでテンポの良い雰囲気が出来ていると思うし、「ジグザグ」という言葉一つで怪異の全てを表してしまうところもなかなか心憎いところである。
作者自身が怪異の本質を見抜いて、それに見合った長さと調子で書いているところが成功していると思う。
この怪異の様子を細かな写実描写で精緻に書いても、また体験者の感情を情景に合わせて織り込みながら書いても、多分生きてこなかったと思うし、却って冗長な印象だけにとどまったであろう。
最後の締めの文は少々あざといという気もするが、子供らしい感覚であると思うので、内容的に問題はないと思う。
ただこの文中に“私”という表記があるが、これはどうしても大人っぽさを感じさせるものであり、取り除いた方が自然ではないだろうか。
全般的には非常によくまとまっており、好作品と言って良いだろう。