【0】タクシー

“見えない”人が“見える”人の行動を見て怪異を知るという典型的な作品である。
このタイプの作品の場合、一番のポイントは“見える”人の怪異に対するリアクションが突拍子もないほどインパクトが強いかどうかである。
この観点から見ると、病院の前でいきなりタクシーに塩を撒く運転手というのは、ほぼ目的を達成できるだけのレベルであると言えるだろう。
しかしながら、この程度の短い作品でこの種の怪談が提示されてもどうしても怪異そのものが弱すぎて、強烈さというものを与えることは難しい。
言うならば、こぢんまりとまとまった恐怖というもので落ち着いてしまうだろう。
文体に関してはノリが軽すぎるきらいがあるが、文そのものが破綻しているわけでもなく、この程度の短さであれば耐えられると判断して減点の対象とはしなかった(ただし“ファブる”は初読の時には戸惑ってしまったのは事実である)。
可もなく不可もなくというあたりで評価は落ち着くと思う。