【+4】塩壁

原因と結果だけは明瞭なのであるが、何故そのような装置が必要となったのか、何故その装置でないといけないのかという部分がスッポリ抜け落ちているために、良い意味でモヤモヤとした怪しさが全開となっている。
そして何気ない生活から一変して禍々しい状況が溢れかえっていく展開は、霊体の目撃などのダイレクトな怪異がない代わりに、ジワリジワリと外堀を埋められていく様がなかなか強烈なものとなっていると思う。
特に突出した内容はないものの、具体的な記述をこれでもかと盛り込んだ書きぶりは、やはり圧倒される。
この作品は、素人が呪術の“装置”を再現する行為によって元の平穏な状態に戻したという非常に希少性の高い体験談であり、かつ“装置”のみでも十分呪法の効果を出す場合があることを示したが故に高評価とした。
呪術の装置とは、まず第一に装置自体に効果があり、それを仕掛ける術者の能力によってパワーが増大するという意見を持っている。
ただ体験者の切迫した精神状態が術者のそれに近い念を発したのかもしれないし、一概に“装置”ばかりの功績ではないとは思うが、やはり“百均のパスタストッカーと塩”という子供だましのようなアイテムとのギャップが見事に活かされてと言っていいだろう。
ただ一つだけ欲を言えば、体験者の隣家の結末が非常に曖昧にぼかされているのが気になるわけである。
特に“狂い始めて”という尋常ではない言葉で表現されており、また体験者が言葉を濁しているところなど、かなりまずい出来事があったのではないかと想像するしかないのは、少々もどかしい気もする。
大ネタとまではいかないが、しっかりとした展開で読ませてくれる、なかなか新奇な内容であるだろう。