2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『解体』

怪異そのもののシュールさに圧倒されてしまった。電柱下で目撃されたあやかしだけであれば、おそらく信憑性に異議を唱えていた可能性が高いと思う。それだけぶっ飛んだ内容であり、怪異の中でも極めて尋常ならざるものと位置付けて良いだろう。適切な描写に…

『ワンレンの女』

タクシーが死者と思しきものを乗せたという怪談話に持ち込もうとしているのであるが、いかんせん、その乗せた乗客が本当に霊体であったのかについて非常に大きな疑念を持った。というよりも、結論として霊であるという確証は得られず、むしろ生身の人間であ…

『四人組』

タイトルに怪異と直結する言葉が使われているために、最初はあまり期待せずに読んだのだが、シチュエーションと展開の嫌さ加減の凄さに、最終的に引き込まれるようにして読了した。特に四人組が目撃回数を重ねるごとに徐々に体験者を注視するようになってい…

『黒いワンピース』

怪異としては小粒の部類に入るが、目撃者が多数であり、しかも似たようなシチュエーションはあるけれどもかなり変わった内容であると言える。どこからともなく正体不明の服が現れるというパターンなのであるが、それが屋外でかなり長期に渡って張りついてい…

『ミンチ肉』

怪談も含めた怪奇小説とエロ小説に共通する必須の文章力と言えば、やはり“描写”に尽きると思う。読んでいる者のイマジネーションをリアルなものに仕立てるには、論理的に冷静に書き綴る説明ではなく、今起こっているかの如く状況を克明に伝える“描写”が必要…

『空き部屋から』

怪異については、最初はさほど珍しいものではないという感じであったが、落下してからの重量感ある現象には目を見張った。このような落下するあやかしというのは、落下するまでは質感も重量感もあるように見えるのであるが、結局地面にぶつかるまでに見えな…

『寂しがり屋』

タイトルと最初のシチュエーションだけで、どのような怪異が展開されるかのおおよその見当がついてしまった。しかもその怪異の内容がさほど希少性のあるものではなく、そのまま何のひねりもなく予想通りの形で終わってしまっているため、どうしてもありきた…

『地下通路』

いわゆる“異界”に迷い込んだ怪異譚なのであるが、その希少性の高さは驚きである。まず毎日のように通い慣れている道で起こった出来事であり、しかも異界特有の“気が付くといつの間にか違う雰囲気になっていた”という明確な境目のないような入り込み方ではな…

『痛がる何か』

怪異のインパクトの点では最上級、まさか本当にこういう存在がいたのかという思いで読ませていただいた。事故や自殺が多発する現場では、そこで亡くなった複数の人の霊が一体の集団的存在(レギオン)として強大化し、さらにそこ場所での事故や自殺を引き起…

『兆し』

感傷的にならず、“あったること”を時系列的に並べていっているために、読みやすさの点では良かった。また肝心の内容についても、話者にとってもよく分からないことが数多くあるにもかかわらず、丁寧に事実を押さえていることで何となく事情が推測できるとこ…

『スカートの中』

怪異としては相当のレベルの内容であるだろう。怪異そのものの異様さもかなりのものであるし、そしてその展開の緊迫性も含めると、書き方次第では好作品となるだけのポテンシャルを持っている。ところが、怪談というよりもホラー色の強いものになってしまっ…

『一瞬の出来事』

怪異そのものはまさに“一瞬の出来事”らしく、インパクトはあるものの小粒である。どちらかといえば“投げっぱなし怪談”でも十分勝負できるような怪異であると思った。だが、そのような怪異の前段階でノスタルジーを存分に想起させる文章を書くことで、雰囲気…

『黒のハイヒール、白のストッキング』

怪談としては正調、とても堅牢な構成であり、またきちんと怪異が展開されていて、読んでいて危なげないという印象を持った。文章がやや長く、一文に複数の情報を詰め込んでいるものが目立つが、それによる滞りはあまり気にならなかった。それだけ展開の流れ…

『鳥肌』

私事になるが、いわゆる“本当にあった怪異体験”本を蒐集しだしてから、これら怪異現象をデータベース化したいという願望がある。いかにコンパクトに要点だけをまとめて、漏れなく“あったること”だけを抽出したデータを作るかを模索している。実はこのデータ…

『ノート数百冊』

廃墟探訪記としてはしっかりと読ませるものを感じるのであるが、いざそれが怪談として読むと非常に心許ない。要するに、的確に怪異にピンポイントが定まっていないという印象であり、あくまで探訪記のエピソードの一つに過ぎないような書き方で終わっている…

『帰路の怪』

オーソドックスな印象を持つ目撃談である。登場するあやかしについては妖怪なのか霊体なのかの判断は難しいが、その異様な行動は文章からは理解できる。しかし、やや勿体ぶった書き方と、文章構成のバランスの悪さで、すんなりと状況把握するには思いの外時…

『面接』

意識的に文章を古めかしいものにして、古文に準じるような雰囲気を出そうとしたのだろうか(カギ括弧を用いずに地の文に会話文を紛れ込ませたのも、おそらくそのような効果を狙ったものであると推測する)。言葉の選択にもそれなりの工夫が見られるが、残念…

『愛娘』

生霊の怪異としても、生い立ちから順々に体験者に見せていくという非常に希少な内容であり、その点でも評価できる。また機械の不調と田中さんの心情と重ね合わせながら組み上げていく展開は、謎が解明されていくプロセスとも並行する形であり、とても効果的…

『家探しの教訓』

タイトルだけで話の内容が判ってしまったし、そして読んだ内容はありきたりと言うよりも、あまりにも貧弱な怪異しか起こっておらず、最後の顛末もあまりにも見事なヘタレっぷりでお粗末なぐらいである。怪談としての体裁は整っているとは言えるのだが、いか…

『形見分け』

持っていると死を招く呪物にまつわる怪異譚である。このような品物が登場する話は少なくなく、いわゆる大ネタクラスの怪談としてよく登場してくるので、ある意味、話の展開の希少性としてはそれほどのものではないと思う。しかしこの作品で特筆されるのは、…

『祟り池』

開発によって山が荒らされたために“山の神”が怒って障りをもたらすという話であるが、とにかく書き方で全然面白味ない作品に仕上がってしまった。 一応主人公の目線からストーリーが展開していくのだが、冒頭に“僕が小さいころ”という表記があるために、何か…

『青写真』

一言で語ってしまえば、「心霊写真にまつわるエピソード」ということになるだろう。なぜか封書で写真を送ったり、その封書を車内に持ち込んだり、道に迷ってなぜか神社に行き着いたりと、説明できない不思議な“偶然”が重なり合って、最終的にネガもその神社…