2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧
謎の男、叫び続ける子供、壁から生えたあやかし、投身自殺の女…これだけの素材がありながら、結局どれもがアクセントになりきれず、ただ雑然と並べられた感が強い。 もとより“不条理怪談”の様相を明瞭にしている怪異であるので、それぞれの怪異が密接に関連…
一昔前の投稿怪談のノリで書かれているという印象である。 ある意味非常に怖い体験なのであるが、あやかしの描写が平板で、なおかつ体験者の恐怖感が紋切り型であるために、怪異が本来持っているだろう迫力が感じられなかった(“ですます調”を改めるだけでも…
それぞれ単独で読んでもパッとしないものを重ね合わせたのだが、結局重ね合わせた目的がはっきりすることもなく、パッとしないものを重ねてもパッとしないという見本になってしまった感がある。 同じ体験者という部分では共通項があるのだが、訪れたあやかし…
一応怪異は書かれているが、これでは「○○を目撃しました」だけの報告に終わってしまっている。 さすがにこのレベルの話では、小学生向けの“こわいお話し”でもどこまで通用するかはなはだ心もとない。 とにかく目撃したあやかしの様子をもっとたくさん描写し…
雪崩れ込むように体験者の身の回りに怪異が起こっているわけだが、それらがほとんど整理されないまま書き綴られているために、非常に読みづらい。 はっきり言うと、怪談作品としてはまだ未成立の段階だと思う。 特にまずいのが地鎮祭の後の出来事であり、脅…
単純な怪異目撃談であるが、“怪談”を書く上でやってはいけない致命的なミスを犯しまくっている。 タイトルに目撃したあやかしそのものを出してしまっている。 これでは落ち武者の生首というインパクトのあるものが登場したとしても、何の驚きも感じることが…
不思議なものを見ただけの目撃談だが、実に回りくどい書き方をしており、しかもそのまどろっこしい講釈の間に読者はその正体に気付いてしまっている始末である。 結局勿体ぶった書き方をしているが、単純に言えば“猫の顔をした人間体が公園にたむろしていた”…
書き手本人の体験ではあるが、本人の記憶が定かではない部分が多いので、母親目線の体験談として書き上げた方がより信憑性を持って受け入れられたのではないだろうか。 子供が墓地で見た霊体から供養されなかった親族の存在を知ることになるパターンは結構あ…
典型的な異界譚であるが、歴史的建造物ではなく資料館で起こっているためにお決まりのパターンになっていないところが非常に希少である。 ベルサイユ宮殿やロンドン塔でも時空を超えた異世界に迷い込んだというケースが報告されているが、その場合はある特定…
これは事実だから致し方ないのであるが、怪異の肝とばかり思っていた家屋の揺れが実は“地震”だったというくだりで完全に腰砕け状態となってしまった。 結局それを上回るだけの怪異が出てこないために、一体何のための怪異報告であるか、書き手の公開意図が知…
情景部分の描写などはそれなりに妖しい雰囲気を作り出すことに成功していると言えるのだが、肝心のあやかしの容姿についての記述が非常にぞんざいなものになっている。 座っている様子は何か凝った表記をしているが(ただしイメージ出来る姿は、ヤンキーの兄…
冒頭から起こる怪異の雰囲気とタイトルとの間に大きな意識の隔たりが生じたために、最初からエピソードの展開に付いていけなかった。 妖しい気配に対する母親の対応を見ると、どうしてもその気配の正体が邪悪で禍々しい存在であるかのような印象を持ってしま…
日常の間隙を縫って非日常である怪異が入り込んでくるとするならば、この作品における怪異はまさにその典型であると言えるだろう。 どこからが日常の世界で、どこからが非日常の異界なのかが全くわからないまま事態が展開する流れは、非常に読み応えのある作…
書き手が非常に意識していたのは、廃墟内の怪異ではなく、むしろ一緒に入った女の子の存在だったのだと推測する。 実はその女の子と遊びだした段階で既に怪異の世界に一歩踏み込んでいるのであり、彼女の存在なしには廃墟探訪もなかったし、その中で様々な怪…
作品としては隙だらけ、冒頭部分からかなり脱力させるような間の抜けたエピソードであり、ある意味構成としては自滅していると言ってもおかしくないレベルの内容である。 この作品に関する重大な“発見”をするまでは、間違いなくマイナス評価以外はあり得ない…
収拾がつかないという以上に、雑然と怪異を並べ立てただけというお粗末な怪異譚となってしまっている。 しかもそのバラバラな怪異を繋いでいるのが、体験者のピント外れな講釈や余計な補足的説明だから、さらにうんざりとした印象しか残らない。 結局、体験…
人間の邪念が生み出してしまったものの恐怖、そしてそれが一人歩きしてさらなる恐怖を生み出す。 ネタとしては抜群の内容であり、とにかくこの水晶そのものの邪悪な執拗さがこれでもかと言わんばかりに書かれており、それが生み出された経緯の凄まじさも相ま…
作品全編から「信じてくれよ」という体験者の叫びみたいなものが噴き出しており、却って雰囲気を壊している。 信じてもらいたい、寝ぼけていたわけではないという主張を書いてでもわかって欲しいという気持ちは理解できるが、ここまで書いてしまうと逆に胡散…
単純な目撃談であり、“投げっぱなし”的なインパクトが文章で作り出せなかったために、ほとんど何も印象に残るものがなかった。 言うならば、信憑性云々以前に読者を驚かせる工夫も何もないということである。 “狐のような顔をした人が歩いていました”と書く…
非常に興味深い怪異現象であり、また希少な内容であると感じる。 博物館や美術館に展示されている仏像というのは信仰の対象ではなく美術鑑賞の対象という認識で見ているが、それでもなお他の美術品と比べると何か違和感というものを覚える。 そういう印象が…
しっかりとした怪異が起こっているにもかかわらず、完全にポイントをはずしてしまった書き方になってしまっている。 体験者の言葉を疑っている話者の態度が、作品の枠として冒頭と末尾で大々的に書かれてしまっているために、怪異そのものの信憑性を作品内で…
インドの神々が絡むエピソードであり、ある意味スケールは大きいと感じるのだが、怪異のパターンとしては“神様にお祈りしたら病気が治った”だけの話であり、その神様がたまたまインドの神だっただけのことであるという認識である。 それ故に、凄いなと思いつ…
典型的なポルターガイスト現象であるが、その目的が人間が捨てた物を投げ返したりするような明らかに悪戯レベルのものであり、恐怖といえば恐怖なのであるが、何となく人を舐めていると思われる部分が比較的強いものであると考える。 書き手もそれを意識した…
事故や病気で死ぬ者がその最後に別れを伝えにくるという典型的な話であり、いくら書き方を変えてもどうしても先の展開が読めてしまっている。 この作品の場合、午後四時という時間に着目して怪異がほぼ同時刻に現れていることを強調することで、変化球を投じ…
典型的な“旧家の因襲が破られて怪異が起こる”パターンの作品であるが、このシチュエーションの話だけはお決まりの展開になったとしても、それを上回るカタストロフィーの激しさに圧倒される。 ただこの作品について言えば、話し手自身が当該の人間ではなく伝…
タイトルから見ても、猫の鳴き声と赤ん坊の泣き声の類似性を利用して怪異を展開させようという書き手の意図は理解できるのだが、残念ながら、その発想そのものが陳腐なのである。 また怪異の肝と思われる“赤い目”の目撃の描写が舌足らずであり、文章全体の稚…
非常に臨場感のある展開であり、読み応えのある作品という印象を持った。 ただし怪談としては問題も幾分含んでいるという印象もあった。 まず“夢オチ”ネタであるという点は、やはり説得力の点でどうしても見劣りする。 最初に池に向かって無意識に入っていっ…
内容をかいつまんでしまえば、轢かれた猫の死骸のそばに猫の霊体を目撃したというだけのものである。 そのエピソードを軸に、猫の死体はなぜなかなか見当たらないのかなどの余談を付け加えたり、体験者の心情の細やかな変化を書き綴ったりしているのだが、如…
凛とした文章で書かれており、あやかしの登場する場面の静謐さがよく出ているという印象である。 しかしながら、数多くの目撃があるにもかかわらず、坊さんの容姿についての情報はただ“でかい顔”だけであり、怪異の目撃談としては物足りなさを覚えるところで…
冒頭で“サイパン”とくればほとんど最後の展開まで読めてしまうのだが、逆に定番であるために丁寧に状況を書くことで凡庸さを打ち消すことに成功していると思う。 評価できる点は、単なる気配や感触だけではなく、実際に日本兵の霊体を目撃していること、そし…