2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【+2】通り道

獣の霊道という話だけでも十分珍しいエピソードであると思うが、それに加えて赤い馬が通りすぎて火事が発生するという希少な内容までが報告されている。 内容から考えると、霊道は寺にまで延び繋がっており、赤い馬の出現も寺の火事の符丁であると想像して妥…

【−3】黒い老紳士

一読して思ったことは“体験者の見え方が時系列的に変化している”ということである。 一言で“見える”といっても個人差があるのと同様に、一個人においても刻々と変化しているケースがある。 幼少時にはあまりはっきりと能力が開発されずにいたのが、あること…

【−1】待ち人

結論から言うと、感情の飛躍がありすぎて嘘くさく感じてしまった。 怪談というものは、単に恐怖を求めるだけのものではなく、怪異を通して人の心の動きを捉える作品でもあるわけである。 それ故に、この作品のように体験者の感情を揺さぶり、さらには読者の…

【+2】波間の大群

複数の人間が同時にあやかしを目撃したという、なかなか希少な怪異である。 やはりお盆だから現れたと解釈した方が妥当であるだろうか。 クラゲに交じって顔が浮かぶというビジュアルは非常に薄気味悪い印象が強く、数多くの顔が見えているという描写だけで…

【0】気配り

文章・構成共に一定水準を超えるだけの技量はある。 言うならば、一分の隙もない流れを作っているわけである。 しかしながら、ネタそのものが陳腐すぎて、ある意味フォーマット通り、悪い意味でどこかから話を引っ張り出してきたのではないかと思ってしまう…

【−6】気配

まさに“気配”だけで、実際の怪異が成立していない。 姿も見なければ、足音もなく、また体験者以外の証言者もいない状態で、「気配を感じて怖かった」と言われても、本当に額面通りの受け取り方しかできない。 要は超常現象としての怪異は起こっておらず、た…

【−2】念のリサイクル

体験者のキャラクター作りに失敗したために、話の主題が怪異なのか体験者の性悪さなのか判断がつきにくいことになってしまった。 怪異のきっかけはあくまで体験者の非常識な物欲によることは明白なのであるが、ただここまで体験者のキャラクターを悪者に見せ…

【−1】夕焼け

いろいろな工夫がなされているのだが、詰まるところ、怪異の内容が弱すぎるためにどれもが今ひとつのところで活きていないように感じる。 “夕焼けが怖い”という意外な告白から始まり、その不思議な体験を物語るのであるが、その部分の流れるような話しぶりは…

【0】道を這うもの

怪異の内容としては凄く惹かれるものを持っている。 ただしその怪異のさわりだけを読み聞かされたという感じであり、あらゆる面で中途半端という印象だけが残ってしまった。 書かれてある内容は体験者の目撃談だけであり、言うならば、怪異の概略だけが提示…

【−3】風通し

怪異を表現する手法としては、大まかに分けると2つのものがあると思う。 一つは克明な説明と描写で余すところなく徹底的に怪異を表現する方法、そしてもう一つは怪異の決定的瞬間だけを切り取って強烈なインパクトを醸し出す方法である。 この作品における…

【0】えびす様?

メインとなっている怪異については、民俗学的解釈も含めて、非常に興味深い内容であると感じた。 特異な漂着物は、水死体ですら“えびす様”として丁重に取り扱う民間信仰があり、その伝統に則って不思議な形の流木を拾ったのであろう。 ただそれが巨大な蜘蛛…

【−5】誰?

この作品も書き方で全てをぶち壊してしまっている。 オール伝聞体で文章を書くとここまで読みづらくなるのかと、改めて確認させていただいた感がある。 他にも句読点の問題も重なって、とにかく故意に読みづらくしているのではないかと思ったほどである。 少…

【+1】蛇心のルール

いわゆる“因果物”のかなりの大ネタという印象なのであるが、非常に引っ掛かりを覚えた。 内容を精査すると、この因果は父方の姓にまつわるものであって、決して血統ではないということが判る。 具体的に言うと“祖母”が因果に巻き込まれている。 祖母が養子を…

【−4】忘れ物

廃墟スポットで備品を失敬して霊に取り立てをくらうという定番ネタとは真逆とも言える内容で、なかなか珍しい話であるだろう。 親切というか、お節介というか、とりあえず薄気味悪い話であることは言うまでもない。 ところが、文章が最低レベルである。 常々…

【−1】撃退ブレンド

においで霊を撃退しようと考えついて実行した体験者の着想が面白いし、全体の展開も普通の怪談のパターンと少々違うという印象を持った。 言い方は悪いが、実話怪談というよりも、奇想のショートショートを読んでいるような気分であった。 またセンテンスが…

【0】縁日にて

怪異の内容を考えると、果たしてこの書き方がよいのかどうか若干疑問が残る。 構成としてはいわゆる“怪談のフォーマット”、体験者の語りの文と、説明描写の地の文を繰り返しながら展開する書き方である。 それなりのネタであれば、時系列的に起こった出来事…

【+4】帰りたい

非常に凄味のある怪談話である。 怪異のシチュエーションが都市伝説の定番“ダルマ女”に酷似しているのであるが、ディテールの記述が多いために信憑性を失うようなことがなく、却ってその都市伝説の源流ではないかとうがった見方すら出来るほどである。 そし…

【+2】山男の歌

体験者の心理描写が恐怖感を生み出すことを如実に示した好作品である。 怪異自体は“山の怪談”としては特に目立つような内容ではないし、むしろ平凡な話の部類に入るだろう。 ところが、刻々と変化する体験者の心理が手に取るように分かるために、展開ごとに…

【+1】サファリパーク

怪異の内容は非常に珍しいものであり、その不条理さから言えば相当のレベルの高い怪異であるだろう。 しかしその怪異の見せ方に少々問題があるという印象もある。 書き手としては“アフリカ屋”という名前の店から野生の動物が突如として現れる怪現象に焦点を…

【−1】支えてくれた

ドッペルゲンガー(分身体)のまつわる怪異としては、かなり希少なエピソードであると言える。 何を言っても、自分の分身体と直接接触したという事実は、凄く貴重な報告である。 だが、これだけ貴重な内容にもかかわらず、分身体との接触の具体的な状況描写…

【0】雨音

体験者の語りの部分が長くてまどろっこしい、怪異の肝部分に至るまでの説明が冗長、怪異とは直接関係のない表記が多すぎる。 とにかく無駄に長いという印象ばかりが目立ってしまった。 ただ、書き手が何とか怪異を際立たせようと努力している点は十分理解で…

【+3】ネバーランドの入り口は

『白雪姫』に登場する小人然したあやかしが報告されたのが1990年代前半頃、そして最近は“小さなおっさん”タイプのものの目撃が激増しているジャンルの怪異であるが、ついに本物の妖精と思しき存在の報告である。 ティンカー・ベルを彷彿とさせる容姿も希…

【0】ゴミ置き場

あやかしであるゴミ袋に関する情報がかなり削られているという印象であるが、いわゆる“投げっぱなし”怪談にするためにはやむを得ない処置であると感じた(ただし、この削り方でちょうど良いという意味ではないし、やはりイメージするために必要な情報が欠け…

【+2】母子断絶

結論から言うと、この作品は“罰当たり系”怪談の身内バージョンという判断である。 それ故に、体験者の人格についてあれこれ非難すること自体無意味であり、そのレベルでこの作品を読んでも怪談としての面白味は得られないだろうと思う。 今までの“罰当たり系…

【0】紛失

怪異であることを伝えようと一生懸命になって書いていることは理解できるし、出来るだけコンパクトにまとめようとしているようにも見えるのであるが、如何せん、文章がもたつきすぎている印象が強い。 特に一文で一つの説明だけで終わってしまい、他の書き手…

【+1】鈴

家を守護する神によって救われた典型的なパターンであり、なかなか希少な体験談であると思う。 タイトルと冒頭の説明からおおよその展開は把握できたが、だからといって陳腐な内容とは言えないし、同じパターンだから面白くないという感想もない。 この種の…

【−3】魅入られて

書き手の構成の仕方がまずいために、せっかくの怪異譚となるべきものが別方向の内容になってしまったと言える。 火を見て一種の昂奮状態に陥ることは、かなりの数の人間に見られる心理状態である。 またその高揚した心理を自分でコントロールできないような…

【−1】箱の中より

体験者や取材者にとって“自明の理”であるために、作品中での記述を省略して読者を混乱させるケースは結構よくあるミスとして指摘している。 この作品の場合は、これの逆バージョン、体験者にとってはきっちりと識別しなければならない事柄なので記述したが、…

【+2】人違い

小粒なネタながら、非常によくまとまった作品に仕上がっていると思う。 読んでいて鮮やかに4コマ漫画のイメージが頭の中で完成していたほどの、しっかりとした起承転結が作られている。 当然ネタ的にも面白いものがあるのだが、書き手がそれを短い文章の中…

【0】ピョーンと

ネタとしては小粒な怪異をそれなりにコンパクトにまとめたという感である。 ただし必要な部分まで削ってしまったところがある。 怪異の肝であるあやかしの容姿が分かりそうで分からない。 “たわし”が容姿そのものも表現しているのか、あるいは毛並みだけを表…