【+2】通り道

獣の霊道という話だけでも十分珍しいエピソードであると思うが、それに加えて赤い馬が通りすぎて火事が発生するという希少な内容までが報告されている。
内容から考えると、霊道は寺にまで延び繋がっており、赤い馬の出現も寺の火事の符丁であると想像して妥当であるだろう。
火事の後に寺を改築したら霊道が消えてしまったというところからも、結論づけて良いと思う。
動物霊だけの霊道というのも心霊学的な解釈をするのは非常に難しいのであるが、こういう風に冷静に書かれてあると違和感はないところである。
まさに類例がありそうでないという、なかなか希少な目撃談である。
文章に関しても、いわゆるフォーマット化された構成を元に手際よく内容が書かれており、それなりに安定感のある構成という印象を持った。
若干冷静すぎてインパクトが薄い気もしなくもないが、強烈な恐怖譚というよりは不思議な気配が勝ったネタであるので、こういう味付けも十分ありということでよいと思う。
怪異の希少性を高く評価したい作品である。