2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

【+3】繁治さんのトマト

書き手が怪談の本質を知っていればこそ、小粒な怪異を光り輝く“怪談”として組み上げることが出来た佳作であると言える。 お盆(しかも新盆である)に自宅に戻ることなく畑をうろつく他家の子供の霊に対して怒鳴りつけた体験者の態度は、他家の迷っている霊が…

【+1】纏うモノ

見えるがなにも出来ない人、見えないが集めてしまう人、そして見えないが弾いてしまう人という、微妙に三すくみ状態に近いバランスが絶妙な作品である。 実際は妻の妹が弾くことが出来るのか明確ではないのだが、敢えてそれを示唆する内容を書くことによって…

【+2】鍋いっぱいあったのに

体験者の“あったること”を丁寧に書いているので、それなりに読ませる内容の作品であったと思う。 特に希少なのは、瞬間移動(おそらくは時間的な経過の欠落)をしたと体験者が思ってしまった現象である。 残念ながら時間的な経過が書かれていないために本当…

【−5】リアルマサコ

いわゆるサイコパス達の登場する恐怖譚であるが、結論からいうとこれを“怪談”と認めることは出来ない。 この種類の恐怖譚を一つの独立したジャンルとして確立させたのは平山夢明氏であることは間違いないが、氏がこれを確立したきっかけは『「超」怖い話』で…

【−2】乗客

一言でいってしまえば、ありきたり。 走行中の車の屋根にあやかしがへばりついているのを目撃するという話は都市伝説をも含めて定番中の定番と言ってもおかしくなく、それだけの目撃談では怪談投稿サイトの中にあったとしてもほとんど読み捨てられるだけの運…

【+1】高速バトル

高速道路などで走っていると、何かの拍子で車に取り憑くあやかしが現れる話はよくあるのだが、ここでの体験談はその中でも非常に希少性の高い、取り憑き方がしつこくて尋常ではない種類のものであると思う。 カテゴリー的には平凡という感じであるが、それを…

【−1】もう一人

怪異から考えて密接に関係あると判断した内容であれば、書き手(体験者)の解釈を挿入することには異論はないが、この作品のような単なる憶測で語られる解釈は全く必要性のないものであり、むしろ想像の楽しみを奪う機会になってしまうものである。 さらにこ…

【+1】残された想い

結論から言うと、書き手がこの作品で主張したい内容が今ひとつ明確に掴みきれなかった。 というよりも、何となく“いい話”にしようと変な尾ひれを付けてしまったために、強烈な怪異譚が中途半端で抹香臭い話にすり替わってしまったという思いである。 はっき…

【+1】残骸

戦地の怪談の希少性については以前からかなり声を大にして主張しているのであるが、さすがにここまでベタなネタでは希少性といってもかなり厳しいという意見である。 また作品の構成自体が、戦局についての説明から怪異の顛末までが全てフォーマットに従って…

【+2】都市伝説

怪を語れば怪が起こるのたとえを地でいく内容であり、かなり希少な怪異であると思う。 内容を読むと、この都市伝説そのものに何か曰く因縁があるというのではなく、むしろその話を披露した場所なりのシチュエーションがたまたま悪かったために変なものがくっ…

【−1】トンネルの中を

阪神大震災から既に10年以上経ったわけだが、その当時の怪異譚も封印を解かれるように出てきている。 この話もそれの1つであり、それなりの希少性というものは持っていると感じる。 しかし“あったること”を描く怪談という作品としてみた場合、非常に弱さ…

【−5】肉じゃが

“あったること”に対して体験者の推論を加味させて、あたかも怪異であると思い込んでしまったと言うべき作品。 この事故を怪異とみなすために用意された肉じゃがの“予知夢”そのものが憶測だけで成り立っている、少なくともこの文章を読んだだけでは、体験者が…

【0】悪戯

怖い話をし続けていると霊が寄って来るという説は定番であるが、同じようにテレビの心霊特集を見ていると何となくそのような気分になることがある。 この作品の場合、気のせいではなく実際に何らかの現象が起こっている点で、それなりの説得力を持っていると…

【+3】まんめいさま

出来ればどこの地方なのか、またいつ頃の話なのかが書かれてあれば、なお一層記録として完備された内容になっていただろう。 その点を除けば、しっかりと怪異の経緯についても書かれており、神様の霊験に対する畏怖の気持ちも作品中から見て取れる、なかなか…

【0】鏡

都市伝説的に流布している、特に“学校の怪談”よろしく子供の間でまことしやかに噂されている怪異を実際に検証したら、本当に起こってしまったという内容である。 言うまでもなく、そのような怪異が起きてしまった経緯の発端から非常に胡散臭い雰囲気がどうし…

【+2】職務の果て

書き手の“書く目的意識”がはっきりしており、またそれに従ってストーリーが展開しているために、非常に分かりやすい内容になっていると思う。 そして努めて冷静な筆致ではあるが、霊に対する抑えきることの出来ない畏敬の念が末尾部分に集中して書かれており…

【+1】城跡

書かれている情景から推測するとおそらく関東の某有名心霊スポットではないかと思うが、そのスポットで起こった怪異の中でも非常に珍しいものはないだろうか。 どちらかというと心霊的なあやかしというよりは妖怪っぽい印象の方が強いが、なかなか緊迫感のあ…

【+1】徹底した拒絶

不可解な足の怪我といい、突然の火災といい、何かあるという思わせぶりの高い事実が並べられているのであるが、これが怪異であるという決定的な確信を持たせるだけのキーポイントが明確ではなかったという印象である。 一番強く感じたのは“凶宅ネタ”であるに…

【+3】鳥居の倒れていた土地

因果性が非常に高く、またその原因が“倒れた鳥居のあった場所”という、さもありなん土地である点でも相当強烈な“祟り系”怪談であると思った。 またその家の住人である女性を通して、徐々に歯車が狂い、そして何ものかの力に屈して蝕まれていく過程が時系列的…

【−6】巣くわれて

結論から言ってしまうと、この作品には超常的な怪異と認められる内容が全くない。 同じ通りに面していても繁盛している店もあれば、そうでない店もある(しかも小売販売店と飲食店という異なるカテゴリーの店で単純比較されてもピンとくるものが全然ない)。…

【−2】42

起こっている怪異については、申し分ないほど充実した(?)内容になっている。 42についての符丁も単なる偶然では済まされないほどの回数になっているので、小粒ながら怪異であると認識出来るレベルにまでなっていると思うし、壁から出てくる血も目の錯覚と…

【+2】呼び声

淡々とした筆致で書くことによって、却って恐怖を浮かび上がらせることに成功した作品であろう。 特に劇的な場面はないにせよ、子供の異常行動から一気にあやかしの肝へ移行する展開は薄ら寒い恐怖を感じさせるものであると言える。 また冷蔵庫から聞こえて…

【0】お粗末な幽体離脱

怪談話の作品というよりも、エッセイに近いレポートという感じがした。 特に最後の部分で自分の感想や思いというものを読者に伝えることの方が主眼となっていると判断出来るので、そういう印象を受けたのだと思う。 ただ、やはり“幽体離脱ネタ”ということで…

【+1】峠の守護

2つの話とも不思議なことが起こった場所にお地蔵様があったということであるから、何らかの加護があったと判断するのが妥当であると思う。 だがこのように個人が特定の神仏から加護を受けているという話の場合、どうしてもその背景に何らかの縁が存在してい…

【0】ホットケーキ

“不条理系投げっぱなし怪談”の典型的な作品である。 ただし起こった怪異も小粒であるし、最後にはあやかしが出てきたホットケーキを旦那に食べさせているので、あまり大したことのないものという印象で終わってしまった。 表記内容についても取りたてて決定…

【−1】猫の目

猫の目に霊が映っていたというエピソードも、二階のベランダに男の首だけがフラフラと浮かんでいたというエピソードも、どちらも多くの類話があり、その2つが重なったとしても取りたてて新鮮味がないところである。 怪異のレベルとしては、ごくあっさりとし…

【+3】次は何だ。

自分の知らない相手から名指しで呼ばれるというのはそれだけで恐怖であるし、ましてやその相手が得体の知れないものであれば恐怖はなおさらである。 そして名指しした者の予告した内容と一致する不幸に遭遇したならば、恐怖という言葉だけでは済まされない何…

【−2】温泉

“あったること”のインパクトで勝負するタイプの怪談話であるが、文体が全てをぶち壊してしまっている。 語り口調の“ですます体”なので、テンポがゆったりとしすぎて全体に間延びしている印象が強く、そこに一発芸的なインパクトのある怪異を突っ込んだとして…

【0】ばたばた

非常に緊迫感のある展開であると思うと同時に、その緊迫感の原因があやかしとの遭遇に怯える体験者の必死さにあるために、怪異そのものの強烈さよりもあやかしを見まいとして行動する体験者の方に焦点が当たりすぎた感が強い。 体験者が恐怖を感じ、そしてそ…

【−1】仕返し?

耳元で大声がしたというのは明らかに怪異として認められるが、その前提として置かれている“ラップ音”については大きく引っ掛かった。 タイトルで“仕返し”と明記している以上、このラップ音と大声との間に因果関係があると見ている、つまりラップ音も怪現象で…