【+1】高速バトル

高速道路などで走っていると、何かの拍子で車に取り憑くあやかしが現れる話はよくあるのだが、ここでの体験談はその中でも非常に希少性の高い、取り憑き方がしつこくて尋常ではない種類のものであると思う。
カテゴリー的には平凡という感じであるが、それを補ってあまりある強烈な体験であるので、却って連続して生じる怪異のインパクトは鮮明であると言える。
ただ、これだけの連続する怪異を捌ききっていないという印象も同時にある。
あまりにも奇怪なことが起こりすぎて、焦点を当てるべき肝の部分を絞りきれず、ただただ時系列的に“あったること”を並べてしまった感があり、臨場感や盛り上がりに欠ける淡泊な描写に終始してしまったように思う(それぞれの怪異に分けていくとさほど強烈なものは少なく、連続的であることでインパクトを作っているために、時系列的な描写だけではヤマ場が自然に作り上げられることがない。書き手の工夫が必要な部分である)。
あやかしの容姿についてもあっさりとしており、またミラーに映っている顔が車外にあったのかどうかもはっきりしていないために(バックミラーだから当然車外も車内も見ることが出来るという認識で読んでいる)、いきなり“振り切ってやる”とか“後部座席から笑い声”と表記されてもすぐに状況が把握出来ないなどの瑕疵も存在した。
書き方次第では十分恐怖感を出せる内容だっただけに、惜しい気がする。
こういう連続して怪異が起こっている場合、書き手自身が肝を見定めて(個人的にはボンネットの上にいた女を見た瞬間)そこにクライマックスを持ってくるような書き方をしないと、平板な印象でこぢんまりとしてしまうように思う。