2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【+1】お化け屋敷

都市伝説などでも“本物が出るお化け屋敷”の噂は絶えないが、ここまで強烈な話は初見である(実際、某遊園地では「出る」らしいが、それでも単体ということだ)。 また説明描写が丁寧であり、しっかりと読める内容になっている。 かなり初期の段階でネタの全…

【−1】苦情

申し訳ない言い方になるが、認知症という言葉から得られる印象はどうしても“一般常識が通用しない世界”というものになってしまう。 それ故に、信憑性という部分でやはり疑念が生じてしまうことになる。 この作品で言えば、苦情を言ってきた入所者が普段どの…

【0】雨が降るとは限らない

“実話怪談”とは、体験者が実在するという“必要条件”と共に、整合性を維持したリアルであるという“十分条件”がなければ成立しないという私見を持っている。 いくら体験者が存在する話であっても、読者に対してリアルな印象を与えることができなければただの与…

【+1】間から

怪異の肝である“女性の顔”の見え方がもう一つよく分からない。 スポーク越しに見えかつ目元と鼻筋だけしか見えないという表記から想像できるのは、本来なら見えるはずの顔の部分が切り取られるようにして見えなかったという情景である。 もしこの光景が正し…

【0】泊まれない…

“オノマトペ”はわずかな言葉によって読者に対して最大公約数的な情景を想起させることができる。 しかし肝の部分でそれを多用すると、逆に具象性を失って中途半端に分かった状況に陥ってしまう。 この作品は、そのオノマトペの扱いで失敗したパターンと言え…

【+2】カラオケ

非常に希少性の高い怪異である。 霊体はある特定の思念に支配されているが故に、固着した思考しかできないというのが通説である。 だから生身の人間の言動に対して、行動なり表情なりといった単純なリアクションを取ることはあっても、まず“言葉”そのものを…

【+3】女の子の秘密

他愛のない話からスタートし、どのような展開となるかと思いながら読み進めていった。 結論から言えば、新しい試みがそこそこの効果を見せたという印象である。 怪異自体はかなり突拍子もないようなあやかしの目撃であり、普通のパターンでいけば“投げっぱな…

【+1】幽霊家族

もっと強烈な怪異譚になるはずの要素を持ちながら、最後まで不発のままで終わってしまった感が強い。 話の中心が、より微小な怪異の体験者である兄を中心に書かれているために、より鮮烈な妹の体験談が触りだけで終わってしまっているところが物足りなさを感…

【+3】見

“あったること”の希少性よりも、とにかく“怪談”として魅力を感じる佳作である。 最初は子供時代に出会った“見える”人との体験談程度と軽く見ていたために、最後のどんでん返しには脱帽した。 本当に少年は見えていたのかどうなのかが、彼の死によって永遠の…

【0】くねくね

この作品も構成面で失敗していると思う。 町中で思いも掛けないようなあやかしを目撃したというだけの展開であるが、こういう突拍子もないあやかしを文章として読ませるためには、やはり最後に「あやかしと見なした」根拠となる異質な特徴の表記で締め括るの…

【0】窓の外から

読みやすい描写という点だけ言うならば、非常に良くできた作品である。 怪談語りの筆法としては、ある意味、王道の一つであると言ってもいいだろう。 それだけ優れた描写なのであるが、如何せん、ネタがあまりにも平凡すぎるのである。 この程度の体験を単な…

【0】ビードロ

簡潔にまとめられているのは良いのであるが、要点だけが箇条書きのように提示されているだけで、怪異そのもののディテールに関する描写がほとんど書かれていない状態である。 骨子だけがきれいに並べられているので、舌足らずな部分もなく、いかにも正確な怪…

【0】内にて備える

“岡崎さん”と“兄の首の傷”から、以前の投稿作『敵味方関係』のサイドストーリーとみなして良いだろう。 その想定を加味して評すると、それなりに怪異の面白さというものが湧いてくる。 しかし、単独の作品として読んだ場合、守護霊(これも父親の一言だけで…

【+1】びっくりするでぇ

民俗学的見地から書かれたエッセイとして評価するならば、かなり面白いと感じるのであるが、“怪談”として読むと構成面でマイナスとなる部分がある。 この作品の怪異の肝となるのは、墓石とは知らずに踏みつけた親戚の子供達が見た夢の内容と、それに合致する…

【+2】河童

妖怪目撃談としては、なかなかいい作品であると思う。 遠賀川という、さもありなんという地名が書かれているのが特にいい。 この地名だけでも、十分貴重な体験であると言ってもいいかもしれない。 しかし惜しいのは、この目撃された河童があまりにも典型的す…

【0】空気の塊

この作品は非常に評価が難しい。 空気の塊を見ている体験者も、そしてその話を聞いた体験者も、どちらも小学校低学年の年齢であり、証言そのものの説得力に難点がある。 その最たるものが“空気の塊が逃げ出したりパチンと割れちゃう様な人は死んじゃう人”と…

【−2】あと少し

正直な感想としては、“実話”であることを明確な前提として意識して読まないと、かなり厳しい内容ということに尽きるだろう。 息止め競争の夢から自分が無呼吸状態で目覚める一連の流れは“夢オチ”以外の何ものでもなく、これを怪異と称することはおそらく無謀…

【−1】夜勤中

勤務中に起こったあやかしの目撃談をきちんと説明しているのであるが、あまりにもそれが煩雑で却って作品全体を読みづらくさせている。 特に体験者の語りの部分は状況説明を通り越して、まさに解説者の発言のノリに近いものを感じさせる。 それ故に、ストー…

【+2】監視員

海にまつわる怪談としては、よくあるパターンと言ってもおかしくないほどの内容である。 それ故に、同種のパターンよりもどれだけディテールが詰まっているかが、評価の一番のポイントになるという意見である。 この作品の場合で言えば、やはり水死体のグロ…

【+2】のあい

文章全体から醸し出される雰囲気に格調があり、ある意味完成された世界が広がっていると言えるだろう。 常識から突出した怪異を強調するというよりも、世界全体に人知を超えた不思議が存在しており、体験者がたまたまそれに遭遇したと言うべき汎神論的世界観…

【+2】トラウマ

悪夢を見て目覚めた後、それと直結するような異変が隣で寝ている肉親に現れるというパターンである。 一歩間違うと入れ子の“夢オチ”怪談みたいになるのだが、この作品の場合“朝まで泣いた”という表記によって体験者が見た祖父の異変が夢ではないことを強調し…

【+1】フランネル

最初から“夢である”ということを書いてしまっているために、かなり胡散臭いという印象が先に立ってしまった。 他の“夢オチ”ネタの作品と比べれば覚醒時にしっかりと怪異が発生しているので、ただの思い込みによる怪異であるとは思わないのであるが、それでも…

【+4】餓鬼

今大会は戦中・戦後時代の怪談というべきものがわりと多く登場しているが、これもその中の佳作である。 前半部分にあるその当時の家族の様子は記録としても貴重なものであると思うし、また怪異の肝部分と巧くリンクされていて、無駄のない仕掛けであるという…

【+2】水の上を

あやかしの目撃譚としては非常に良くまとまっており、一定水準はクリア出来ているように感じる(特にエンディングの締め方は結構いい感じだと思った)。 ただ表記の面でいくつか不満を感じるところがあった。 まとめると矛盾を感じさせるような表記があった…

【0】突然すぎて

個人的には、幾度か似たような体験をしているので、気持ちとしては琴線に触れるという思いである。 だが、似たような体験のほとんどはおそらく夢の中での出来事であったという認識をしているため、この作品の内容も多分そうであろうと推察する。 “優しく肩を…

【0】お互い様

この作品に書かれている怪異のほとんどは、思い込みや偶然の産物であるとして斥けられてもおかしくない存在である。 呪いを実行してから起こった身の回りの不幸や異変はすぐに超常的な怪異であるとは言えないし、手の甲の赤い点や蛆が湧いてきた事実も環境に…

【+2】気が弱い幽霊

これもオチが秀逸である。 最初はタイトルと合わせて大した内容ではないと思わせておいて(幽霊に一喝したら完全撤退してしまったという話はかなり陳腐な部類である)、移動したのは隣の部屋だったというのは、小気味よい裏切り方であるだろう。 怒られたぐ…

【+3】口笛

口笛を吹くあやかしというのもあまり記憶にない。 そのような存在だけでもなかなか珍しいのであるが、展開があまりにも意外すぎる。 まさか体験者もあやかしも意地になって口笛の吹きあいをするとは、ある意味とんでもない“交霊会”である。 この怪異体験だけ…

【+1】営業妨害

客ばかりが霊を目撃(しかも同じヤツである)するという、なかなか希少性のある怪異である。 文体そのものが軽妙であることが災いして、作品全体が余計に散漫に見えてしまった。 実際、冒頭部分の“子供の霊”のエピソードは全く本題と関係ないし、従業員が体…

【0】当たっちゃった

小粒のネタであり、またよくある話である。 金縛りネタと比べればまだ希少性はあると思うが、声を大にするほど珍しいというわけでもない。 シチュエーションとしては、悪戯してきた霊が不意打ちを食らったというパターンでそれなりに面白い話にはなるが、そ…