【+2】水の上を

あやかしの目撃譚としては非常に良くまとまっており、一定水準はクリア出来ているように感じる(特にエンディングの締め方は結構いい感じだと思った)。
ただ表記の面でいくつか不満を感じるところがあった。
まとめると矛盾を感じさせるような表記があったということである。
まず“キャミソールの様な後ろ姿”と書きながら“少なくとも老婆ではない”と付け加える点。
矛盾というところまではいかないが、“キャミソール”と書いた直後に“老婆”という言葉を持ってくること自体、あまり自然ではないだろう。
また“飛び歩く様にふわんふわんと渡っていた”という表記に対して、“アメンボウの様に河を飛び渡って行った”という対句もイメージ的に違和感を覚えた。
“ふわんふわん”と“アメンボウ”とではスピード感が相当違う。
このように得体の知れないあやかしに関して趣の異なる言葉による描写がなされてしまったために、微妙な部分でもう一つしっくりとこないという印象を持ってしまった。
おそらくこんな感じだろうというおぼろげなイメージは取れるので減点にまでは至らないと思ったが、スムーズな読みのレベルでは引っ掛かりを覚えてしまった。
個人的には、作者自身がイメージを固定化出来なかったのだろうという意見である。