2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

【+5】境涯

作者が狙ったのか、あるいは中の人が狙ったのか、何かそういう意図を超越して「怪談の神様はいるのだな」とこの作品を読みながら思っている。 次々と謎深い怪異が有機的に絡みながら、さらに深遠な闇を作り出す。 その暗黙の世襲の中で、自らの宿命を悟りそ…

【+2】ヘルプさん

同じ霊体が長期にわたって現れるという点で、この作品はなかなか貴重な内容であると思う。 また目撃者が複数という点でも評価は高い。 しかしながらしっくりといかないところもいくつかあるのも事実である。 特に問題だと思ったのは、この一連の怪異の視点軸…

【0】Last shot

怪異体験を延々と書きつづり、ボリュームを増やしていこうという意図が見て取れた。 ところがその意図はほとんど効果を上げていないと思うし、むしろお互いの怪異が足の引っ張り合いをしてしまったという印象である。 同一人物が体験しているという共通点以…

【−3】トンネル

作品そのものの講評の前に【パクリ判定】に関するコメントを。 私がこの大会の講評を始めて1週間ほどした頃、講評を全て変えて評点もかなりいじったことがある(今でもこのブログ内に変更前の講評が残っております)。 その中で評点を大幅に変えた作品があ…

【−1】酔いどれ奇譚

酔っぱらっている最中の怪異というのは、夢ネタ同様、信憑性に関する保証を作者が維持できるかに内容がかかっているといっても過言ではない。 作者はオチの部分にインパクトをつけるためにいきなり噛み跡を持ってきたのであるが、この物理的証拠が却って胡散…

【−4】盗み見

妻の「昨日見た夢の話」から始まり、それが自分の見たものと同じだったと嘆息し、せめて夢の中だけでも自由でいさせて欲しいと愁訴する展開。 ところがタイトルは『盗み見』であり、同じ夢を見る根拠が“妻の鋭い勘”であるとする。 一読して出てきたイメージ…

【−3】マロ

この作品も、あやかしの描写に既存のイメージを持ちだしてきたために大きくマイナスとさせていただいている。 ただし、今までの問題とは違う次元での苦言となる。 麿赤兒という俳優、知名度で言えばやはり「?」の部類に入る人物だろう(特徴のある容貌の方…

【+2】拾った骨

そつのない文章であるし、怪異の希少度もそれなりにある。 しかしなぜか積極的な好評価に持っていけないという感想である。 やはり一番は“罰当たり”ネタにしてはあまり手痛い被害がないということに対する、無意識の非難なのかもしれない。 骨になったとはい…

【0】老いても

犬にまつわる不思議な話であるが、ありきたりという印象である。 たまたま犬が年老いていて番犬のように威嚇しないだろうと思っていたらやりました、というレベルの話であって、その条件さえなければよくある話で終わってしまうだろう。 飼っている動物画あ…

【+3】貸し切り

とうとう最後まで怪異自体の正体が語られることもなく終わるという、なかなか巧妙な構成を持つ作品である。 単に怪異が書かれていないのではなく、輪郭だけを丁寧になぞっているので良い意味でのイライラが募り、それが読者の想像力を大いに刺激している。 …

【−2】聲

声という形のないものを文字で表記することは非常に難しい。 加えて内容が聞き取れない声を表記することは、なお困難を要する。 結局のところ、この作品は非常に微少な怪異を題材にしていながら、ある意味最高度のレトリックを要求されていると言える。 その…

【+2】真の映画ファンとは・・・

同じ映画館での怪異であるが、その種明かしを先に言っても今ひとつ面白味に欠けるし、かといって最後まで隠し通せるものでもない(“赤いもの”という表記でおおよそ見当がついてしまう)。 どちらがまだ良いかと言われれば、この作品のように隠し続けた方が良…

そろそろクライマックス

25日で【超−1】の作品公開も終了し、後は講評受け付けを残すのみとなった。 気付くと4ヶ月の長丁場もアッという間であったように思う。 明日ぐらいには僕も講評を完了させるつもりであるが、407編は昨年より少なかったというだけで、真面目に講評する…

【0】ぬるざら

結局のところ、肝である怪異の存在に費やす文と、その周辺を固める怪しげな状況に費やす文とのバランスが非常に悪いという印象である。 宿の怪しく且つ異常な雰囲気を書かなければ怪異が浮き上がることになるだろうし、かといって大仰に書きすぎると、多くの…

【+2】壺

壺があやかしの原因であることは明瞭なのだが、その因果を見極めることは不可能である。 仕事場に現れた老人のあやかしは壺と関係のある人物であり、壺を傘立てにしてなおかつ無造作に扱われたために出てきたと想像するのは容易である。 しかし壺と老人の関…

【+3】手形

とにかく文章が青い。 一生懸命事実を書こうとしているのだが、起こった出来事の全てを文章の中に詰め込もうとしているために、とても読みにくい文章になってしまっている。 まさに情報に溺れるという印象である。 次々と起こる怪異から逸脱するようない余計…

【+2】森の遊歩道

多分10年以上前であれば「リアリティがあって、実話っぽい怪談」という好評価で受け入れられたであろう作品である。 初期の実話怪談は大仰なスプラッターホラーのアンチテーゼという存在でもあったから、このような体験者のリアルな恐怖感と些細な怪異とい…

【+3】事務所にて

怪異自体は連発で起こっているものの、頑張っても“指2本”だけの出現である。 このぐらい小粒の怪異であると、大仰な書き方でやっても具合が悪いし、淡々とした書き方ではそれこそ埋没の危険性もある。 この作品を評価する点は、いつもであれば酷評の対象で…

【+2】生きた魔除け

この作品はこの作品で明確な主題を持って書かれているので一定の評価は出来るが、視点を変えればもっと凄い内容になったのではと思わせる部分がいくつもある。 猫が家の魔除け代わりになるという話は非常に面白いし、そのきっかけとなった話も興味深いもので…

【−1】金縛り

何度もしつこく書いて申し訳ないが、金縛りネタは余程の特異性を持つか、あるいは付加価値が高いか、決定的な物証があるか、いずれかの条件に該当しなければ、むしろジャンキー・マニアの類ほど厳しい評しか出せないということである。 金縛りの最中に黒い変…

【−1】ぎっしり

完全に怪異の肝にする場面が判っていながら、見事にそこで空振りをしてしまった感が強い。 多くの方の指摘がある通り、この怪異の肝は押入の中に“ぎっしり”とある顔なのであるが、“ぎっしり”と言われても一体どのような状態でつまっているのか、そのあたりの…

【+2】手首

掌編であり、内容としても取るに足らない、よくあるシチュエーションである。 だが、痴漢撃退よろしく霊体の手をひっ掴んだところ、そしてその掴んだ手に温もりがあったというこの2つのポイントの希少性は見逃せない。 特に生身の人間のような霊体の手とい…

【+1】イチ

この作品は書いてある情報を頼りにして読みとる内容よりも、その裏にひっそりと横たわる厭な雰囲気に圧倒されそうになった。 怪異自体も御先祖を粗末にするといけないという因襲的なものにまつわる内容なのであるが、それよりもその怪異を発生させた原因が誰…

【0】リフレイン

電話怪談の王道というべき作品である。 この作品の怪異の肝は、掛かってきた電話の主の異常性であるだろう。 電話の主が霊であろうが、生身の人間であろうが、無機質な言葉の繰り返しをするというのは体験者にとってはかなりの怖さがある。 その言葉自体が何…

【+1】んもー

先に書いておくと、この作品の完成度は非常に高い。 “あったること”であるのだが、それにしても見事なぐらいきれいなオチであるとしか言いようがない。 あまりにもストレートすぎるぐらいベタな展開である。 ある意味、作者がいじりようがないほどの内容であ…

【0】同士

シチュエーションを考えると非常に面白いものを感じさせてくれる。 偶然“見える”人同士が遭遇し、お互いがあやかしを見てビビっているという光景は、まさにありそうでなかなかお目にかかれないものだと思った。 しかしこの作品ではこれだけの話で終わってい…

【+1】なにも見てない

警備員ネタとしてはまさに王道中の王道。 出てきたあやかしも含めて、これ以上ないほど平均的な怪異譚である。 作者もそれを意識してか、かなり書き方に工夫をしているという印象である。 謎の女(結局は霊体なのだが)を生身の不審者と思い込んで追いかけて…

【+3】神対決

某歌舞伎役者がテレビドラマに出演した際、他の役者と比べてあまりに仰々しい演技をやってしまったために酷評されていた話を思い出した。 この作品も“実話怪談”という土俵上では異色の雰囲気を持つものという印象である。 それを許容範囲とするか、あるいは…

【−3】お互い様

夫婦で金縛り体験であるが、内容の低いものがいくら積まれようとも結局は内容の高いものには成りがたいという実例のようなものになってしまっている。 その原因となっているのが、夫婦だから同じ部屋で寝ていると推定するが、二人の金縛り体験が全然シンクロ…

【−2】かなしばり

“金縛り”ネタは余程の内容でなければ評価を上げることは至難の業という見解である。 この作品での現象は、肉親の声を真似た何ものかの出現が付加されている内容でであり、その点は希少性を感じるところである。 だが、この怪異が本当に起こったものなのか、…