【+3】神対決

某歌舞伎役者がテレビドラマに出演した際、他の役者と比べてあまりに仰々しい演技をやってしまったために酷評されていた話を思い出した。
この作品も“実話怪談”という土俵上では異色の雰囲気を持つものという印象である。
それを許容範囲とするか、あるいは鼻持ちならないとするかで、相当大きく評価が分かれるだろう。
ストーリーの構成、そして描写を含めた筆力から推察して、小説などの創作畑でかなり腕を磨いてきた作者であるだろう。
冒頭の学術的解説文も自分の言葉でまとめていると思うし、『神様』と体験者が対峙するクライマックスの描写もストレスなく読むことが出来る。
少々説明調が色濃く滲み出ている部分もあるが、概ね小説の作法に則った書きぶりであると感じた。
だが“実話怪談”の最大公約数的な書きぶりと比べると、どうしても大仰な書き方になっている印象は強い。
オーバーアクションな書き方になってくると、どうしてもリアルさを失う。
まさに冒頭に挙げた、テレビドラマで見る歌舞伎役者のリアクションなのである。
ただ怪異自体を抽出するとやはり希少性は高いと思うし、間接的ではあるものの現象として怪異がしっかりと起こっていると認められる(胡散臭い『神様』であるが、それなりの能力はあったと思う。彼がニセ者であれば、これだけの怪異には発展しなかっただろう。ただ相手が悪かったと言うべきなのかもしれない)。
全体的な評としては良好であるが、これだけ迫力のある文体にしてはクライマックスがやや短いのではないかという印象が残った。
もっとボリュームを増やしてより劇的な内容にするか、この分量で抑揚を抑えた文体にするか(タイトルも変更)、いずれかであればもっとしっくりときたのではないかと思った。