2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『その声』

不可解な状況で人が失踪してしまう怪異譚であるが、作品全体の雰囲気が絶妙である。特に体験者と彼氏との電話のやりとりは、ちょっとしたチグハグ感から一気に事態が錯綜したただならぬ展開へと変化し、体験者自身の困惑した感情をしっかりと作り出している…

『雪上登校』

雪国ならではの習慣から起こる怪異譚であり、体験者の子供時代の思い出話という形を取っている。しかも会話も全て方言であり、ローカルさを全面に出してくることによって、古き良き怪談の雰囲気を醸し出していると言えるだろう。読んでいてホッとする印象を…

『見ないでよ!』

「怪談落語」のエロバージョンと言うべき、なかなか面白い作品。おそらく酒の席に語ったら大うけするような、小粒ながら非常によくまとまった怪異譚であると思う。 この作品の一番の肝は、女性のあやかしが言い放った「見ないでよ!」という言葉を、体験者が…

『赤いランドセル』

創作の手法に近い書き方をしているのであるが、それが却って裏目に出てしまった感がある。怪異の肝となる内容を時系列の流れの中に組み込まず、敢えて体験者の記憶のフラッシュバックとして話の末尾に置くという手法であるが、巧くはまってしまうと相当な余…

『バス通勤』

読み手の受け取り方次第で、評価がかなり割れそうな印象のある作品である。結論から言ってしまうと、怪異のレベルと体験者の心理描写に何となくギャップがあり、その差を書き手の丁寧さと取るか、あるいは大仰な表記と取るかによって、印象ががらりと変わる…