【−4】盗み見

妻の「昨日見た夢の話」から始まり、それが自分の見たものと同じだったと嘆息し、せめて夢の中だけでも自由でいさせて欲しいと愁訴する展開。
ところがタイトルは『盗み見』であり、同じ夢を見る根拠が“妻の鋭い勘”であるとする。
一読して出てきたイメージは、熟睡する夫の横で正座をし、無表情のまま夫の寝顔を凝視して夢を読みとる妻である。
それを“昨日私が見た夢”と言って夫に語り聞かせて、腹の底でどす黒い笑みを浮かべる妻…。
ただ夢の内容があまりにも無邪気すぎて、たちまちこのブラックな妄想は却下した。
そして最終的に、この全体的に怪しい雰囲気は作者の思い込みであるという結論に達した。
この作品に出てくる不思議な夢は、シンクロする予知夢という解釈が一番妥当なものである。
それを作者が、妻が自分の夢を盗み見するという意図で書いたために、何か的外れな方向に話が延びていってしまったように感じる。
この作品はある意味、読者に対してさまざまな想像を抱かせる書き方になっていると思う。
ただしそれは作者の技量ではなく、単純にちぐはぐな印象を持たせる言葉が並べられているからに過ぎない。
結局のところ、妻が夢を盗み見するという行為についての根拠が全く示されておらず、これが読者の困惑と疑念を持たせる大きな要因になったと思う。
評をかなり落とした理由であるが、内容自体が錯綜して破綻していると判断したためということで。