【−2】聲

声という形のないものを文字で表記することは非常に難しい。
加えて内容が聞き取れない声を表記することは、なお困難を要する。
結局のところ、この作品は非常に微少な怪異を題材にしていながら、ある意味最高度のレトリックを要求されていると言える。
その技量が未熟なために、この作品は失敗に終わってしまった。
やはり問題は「AたGヤQ2TまWJ@フ5/?.%ん」という意味不明な文字記号羅列による表記が陳腐であり、且つその後の展開とそぐわないという点であろう。
結論から言えば「ミューン」という表記を最初から使ったらいいのであって、意味のない文字記号の羅列は全然必要なかったのである。
むしろ声に関する描写をもっと書くべきだったのである。
声の調子、声の高さ、声の大きさなどを比喩も含めて描写した方が、読者にはよりインパクトのある印象を与えることが出来たのではないだろうか。
そして最後の一文も怪談話の締めくくりとしては悪い意味で破格であると思った。
恐怖感を煽る文にする必要はないが、ここまで暢気な締め方では何か<やおい>な雰囲気で、何となく締まりなく終わるという印象が強い。
そしてその印象が、怪異である声についても緊迫感のない緩い雰囲気にしてしまっている。
正直、読み物としてつまらないという感想しか残らなかった。