【+2】真の映画ファンとは・・・

同じ映画館での怪異であるが、その種明かしを先に言っても今ひとつ面白味に欠けるし、かといって最後まで隠し通せるものでもない(“赤いもの”という表記でおおよそ見当がついてしまう)。
どちらがまだ良いかと言われれば、この作品のように隠し続けた方が良いという意見である。
だが2つの怪異から読みとれるあやかしの姿は、非常に興味の尽きないものである。
まさに二次元のあやかしとも取れる不思議な姿である。
このような怪異を別々の人間から取材できた段階で、作品としては十分評価できるだろう。
ただし冒頭部分の映画に関する蘊蓄は全く不必要。
蘊蓄でも怪異自体やシチュエーションに密接に関係する内容であれば読めるのであるが、単なる一個人の趣味に関するものでは書く意味がない。
タイトルにある“映画ファン”という言葉を補強しようという意図があるのかもしれないが、この試み自体もあまり効果的ではない。
(このあやかしも映画館にずっと居続けるものだからある種の“映画ファン”という風に持っていきたかったのだと推測するが、別にそういう解釈をしなくても成立する怪異だからことさらに強調しなくても良かったと思う)
トータルで見ると、この蘊蓄がかなり減点の対象となった。
“あったること”だけ書けば、貴重な怪異目撃談となったに違いない。