【+1】イチ

この作品は書いてある情報を頼りにして読みとる内容よりも、その裏にひっそりと横たわる厭な雰囲気に圧倒されそうになった。
怪異自体も御先祖を粗末にするといけないという因襲的なものにまつわる内容なのであるが、それよりもその怪異を発生させた原因が誰なのかをさりげなく書いているから、陰湿な印象が非常に強くなる。
親切でやってくれていると思っていたら実は嫌がらせだったという内容には、やはり感情的に引っかかるものがある。
ただそれは明らかになった姑の陰湿ないじめ方だけではなく、それをわざとさりげなく書きながら“仏壇に非礼を詫びる”貞淑な嫁ぶりを誇張する側の底意地の悪さにも、である。
多分これで金縛りには遭わなくて済むかもしれないが、今後この二人の確執は続くであろうし、果てはどのような結末が待っているかそちらの方に興味を持ってしまった。
結局のところ、怪異だけを丹念に追えばいいにもかかわらず、「義母が布団を敷いてくれた」とか「御先祖様に挨拶していたつもりが…」とかいう言わずもがなの言葉を書くから、下世話な話になってしまったと思う。
まあ、一緒の向きで寝ているはずの旦那に一切手を出さず、嫁だけ怖い目に遭わせるような御先祖(直接文句を言ってくれるだけマシだが)を持つ一族だから仕方がないと言えば、それだけなのかもしれないが。
肝である怪異以外のドロドロの人間模様に目がいってしまったので、好評価には至らず。