【+2】ヘルプさん

同じ霊体が長期にわたって現れるという点で、この作品はなかなか貴重な内容であると思う。
また目撃者が複数という点でも評価は高い。
しかしながらしっくりといかないところもいくつかあるのも事実である。
特に問題だと思ったのは、この一連の怪異の視点軸がずれているのではないかという点。
この作品は体験者の一人であるユキさんの視点から書かれている訳なのであるが、展開を考慮すると、一番のキーパーソンはレナさんであることが判る。
キーパーソンと語りの当事者が違うことはよくある形なのであるが、この作品ではユキさんの視点からだけではレナさんと怪異との絡みが全然見えてこない部分が出来てしまっているのである。
しかもその見えてこない部分が、この怪異の核心部分であるところに難点がある。
もう少しレナさんの訴えの内容が明らかになっていれば、状況はかなり変わっていたと思う(特に霊体出現の状況や様子などに関する情報が語られていれば、申し分なかっただろう)。
そのあたりの展開が、最初にユキさんが霊を目撃した場面の情報量と格段に差があり過ぎるため、やや後半がへばったという印象が強くなってしまった。
やはりこういう連続する怪異を書く時は、後半にクライマックスがある方がインパクトの点で効果があると思う。