2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

【+1】ね、何かいる?

シチュエーションを想像するとかなり緊迫した場面になりそうなのであるが、登場人物の会話がのんびりしているので、何となく間延びした雰囲気が入り込んでしまっている。 リアルと言えばリアルだと思うし、ストーリー展開上としては得心のいかないという評も…

【+2】泣き女

留学生が見た異文化風習にまつわる怪談ということになるかもしれないが、残念ながら“泣き女”の風習は日本にはない。 体験者が誤って怪異の坩堝に放り込まれた経緯を書くためには“泣き女”と誤解した内容を盛り込まねばならないが、最終的には葬儀のために寄っ…

【+2】連打

面白いことは面白いのであるが、それが有機的に怪異と絡まっているかと問われると即座に返答しかねる部分がある。 やはり気になったのは、兄のキャラクターが作り込まれすぎという点である。 兄について書かなければストーリーが分からない点があるのも確か…

【+2】立ちそば屋

こういう怪異は、いわゆるジャンキーの方が戸惑ってしまうように感じる。 この怪現象が一体どのような種類のパターンに該当するものなのか、判断つきかねるからである。 まだ起こっていない予知の光景だったのか、あるいはパラレルワールドのような異界を目…

【+3】やしろ

全体的な印象として冗長さと饒舌さを感じた。 まず怪異の肝である鳥居の出現に至るまでの経緯が非常にまどろっこしい。 怪異自体が起こっていないわけでもないが、ここまで話を広げてもよいのかという感想である。 ガテンの人達の会話などは興味深い内容では…

【−1】ゴミ

インパクト勝負で出してきたと推察するが、中途半端である。 ゴミのあるところから「全身灰色の裸の男の子」が飛び出してきたら実際は驚くかもしれないが、文にしてしまうとそれだけでは何か物足りない。 目撃談なのに描写が足りないという印象なのである。 …

【0】時報

過不足ない書き方だと思うのだが、インパクトの薄さが目立ってしまった。 特に、時報が聞こえる可能性をことごとく否定する部分が説明調になってしまっており、ストーリーとしての面白味がない。 記録文であればこれで問題ないのであるが、何か無味乾燥な書…

【0】映ってるんです

次々と怪異の報告がなされているのであるが、散漫な印象が強い。 これも文字による怪談話の特性を理解せずに書いているために起こっているように思う。 口頭による怪談話は次々と畳みかけるようにさまざまな怪異を語れば語るほど、その恐怖は蓄積されていく…

【+1】はさみうち

多くの指摘があるように、タイトルの『はさみうち』という言葉が最後に引っかかってしまった。 怪談を数多く読んでいる人間は、どうしても個々の現象をパターンとして認識してしまいがちである。 (“意表を衝かれた”という評は、まさにこのパターン認識を前…

【+4】流し

情緒の隅々にまで体験者の思いが染み通る、非常にウエットな作品である。 怪異らしい怪異がないための減点はあるものの、それでも並の好評価では済ませられないレベルの高さである。 特に秀逸と思わせるのは、体験者の成長に合わせるかのように語られる【流…

【+3】贄

いつも悩むところなのであるが、明らかに人間が人工的に為した怪異を“実話怪談”の範疇に入れるべきなのかどうなのか。 まさにこの作品がその判断の分かれ目に当たる。 結論から言うと、個人的には<許容範囲>であるということになる。 犬を宙吊りにして生け…

【−4】橋の上の出来事

後半部分に言わずもがなのことを書きまくって怪異の印象をぶち壊してしまった。 橋の上で異様な音(これが自転車かどうかは体験者の感性の問題だと思うが)が聞こえたという内容は特に珍しい怪異ではないが、“あったること”としては十分な怪異である。 とこ…

【0】癒し系?

怪異自体はなかなか面白いと思う。 全くスペースがないにもかかわらず、女性が隣に座っていると感じるというくだりは、特に体験した者でなくては語れない印象である(生身の人間が認識している“場所”概念と霊体のそれとは、存在する次元が全く違うために大き…

【0】一緒に

久しぶりの“猫”怪談である。 今までのパターンを踏襲して、いわゆる“和み系”の怪談になっている。 ただ以前の作品と比べると、作者の読者に対する意図的な操作はあまり感じられない。 それでも猫好きにとっては堪らない作品になるのかもしれない。 怪異に関…

【+2】怪談

作者の説明にミスリードがあったために、不満が残ってしまった。 多分作者としては、<声が聞こえる→いつも窓の下で中学生が喋るからそこにいるのだろう→気になって見ると人影がない→よく聞くと収納庫からの声だった>という展開をしたかったのだと推察する…

【−6】絵

この作品に書かれてある内容を怪異と認識するならば、遺書に「恨みます」と書かれてあるだけで呪いとみなさなければならない事態になるだろう。 はっきり言えば、恐怖のベクトルが全く違う方向に伸びている話を“怪異”と思い込んでいるだけである。 いわゆる…

【−5】ここで

正夢が正夢になる、あるいは予知夢のプライベート版というべき作品。 だが内容があまりにもつまらない。 とりあえず単なるデジャヴ現象で片付けられない内容であり、一つの超常現象であることには間違いない。 ただ、したり顔で語られるのもどうかと思う。 …

【+3】環

道から霊体が生えているというシチュエーションもなかなか興味深いが、それよりもオチの“ケンケンパ”には参った。 時折常識では考えられないようなことをしでかす霊もあるが、これはその中でも異色であると言えるだろう。 霊体の出現の全てに意味を求めるの…

【+2】ふすま

正統派というよりもノーマルパターンと評した方がいいのかもしれない。 怪異自体も小粒であり、それなりの怖さも書かれてある内容から想像できる。 ところが作者の立場から見ると、普通に書いてしまったら埋もれてしまうと不安に駆られそうになる。 そこで怪…

【+5】磯に棲むもの

有無も言わさぬ圧倒的な文章で、迫り来る怪異を描写し尽くした感のある作品である。 ここまでしっかりと書かれると話の信憑性を嫌でも感じてしまうし、また“あったること”の凄味が全編にわたって出ていると言えるだろう。 怪異の流れ自体は海の怪談としてさ…

【+2】蟻地獄

とにかく文章による描写が巧いので、ストーリーに入り込みやすい作品であると言える。 体験者の視線から書かれた展開であるが、色々な点でそれを最大限に生かしているという印象である。 内容についても衝撃的な部分はあまりないが、奇怪な体験であることに…

【+1】卒業の記念に

実は、タイトルと、冒頭の“学ラン”という言葉で、いきなり“第二ボタン”というイメージが出来上がってしまった。 先に怪異のネタに直結するものに行き当たってしまったために、最後の部分を読んでも「やはりそうか」で終わってしまった。 さすがにこれは作者…

【−1】トイレにて

あり得ない場所であり得ない声を聞いたら、やはりそれは恐怖の対象になるだろう。 体験者とすれば魂が消え入るほどの恐怖感を味わったことは疑いない。 だが、それを実際に体験していない人間に伝えることが難しいのも事実である。 まず思ったのは、果たして…

【+3】洗濯

何とも不思議な体験談である。 なぜ起こったのかという原因も分からなければ、なぜ収まってしまったのかという根拠もない。 とにかく“あったること”だけを淡々と書くしか表現の仕様もないという、まさに手の付けようのない程よく分からない話である。 体験者…

【+1】デート

掌編ならではの面白味を出してくれた好作品。 これ以上情報が削られると解らなくなるというギリギリのところまで切り詰めた文章である。 「怪訝そうな顔」という一言で、それまでの情報が全て怪異であったことを示しているのは、なかなかの筆さばきであると…

【−4】学校の池

何ともリアルさがないストーリーである。 荒唐無稽さは致し方ないとして、夜の学校へ忘れ物を取りに行くという始まりから、明らかに“グレイ”を意識して書かれたあやかしの描写、小学6年生にもなってこれだけとんでもない事態に遭遇しながら「先生……なにやっ…

【−4】朝礼の前に

体験者の目撃が事実であるという前提がこの大会の絶対条件であるが、この作品に関してはこの条件に抵触するのではないかと思わせるほど際どい内容に感じた。 しかもそのような危うい雰囲気を作りだしたのが、他ならぬ体験者自身のノリの軽さであるからどうし…

【+2】悪霊

冒頭から滔々と書かれている【悪霊論】は個人的に非常に近しい理論展開であり、こういう考え方をしている“見える人”がいることは、なかなか心強いと感じた。 ただしこの理論と怪談話は別物である。 前半の論説は全面的に賛意を表するが、後半から始まる怪談…

【+1】高笑い

どう読んでも、大ネタのイントロダクションという印象から抜け出せなかった。 一方では、非常に禍々しくまた読者の目を引くような怪異であることは間違いない。 だが他方では、怪異として完結していない、むしろこれから先にもっと凄い内容が広がるのではな…

【+3】少女のいる風景

江戸川乱歩の『押し絵と旅する男』をふと思い出した。 ノスタルジックな雰囲気といい、絵の中の少女と体験者の関係といい、何かしらの共通点を感じざるを得ない。 当然“実話怪談”であるからこの傑作幻想譚をモチーフした訳ではないのは解っているのだが、ど…