【+2】泣き女

留学生が見た異文化風習にまつわる怪談ということになるかもしれないが、残念ながら“泣き女”の風習は日本にはない。
体験者が誤って怪異の坩堝に放り込まれた経緯を書くためには“泣き女”と誤解した内容を盛り込まねばならないが、最終的には葬儀のために寄ってきた霊が体験者と波長があったために憑いてしまったというだけの話である。
ことさら“泣き女”を強調し何か異文化交流のように見せかけている点は、少々あざといという印象である。
また日本で外国人が遭遇した怪異ではあるが、別に外国人が日本で霊に取り憑かれてはおかしいという道理があるわけもなく、たまたま外国人の体験であったという理由で希少性を高めるのはどうかと思う。
(個人的には、日本語ペラペラの外国人相手に驚嘆の眼差しを送る日本人というイメージとだぶってやるかたない)
ただ珍しいのは、体験者が目撃するのが葬儀の場面だけという点であろう。
もしかすると体験者に憑いた霊は単なる霊体ではなく、俗に言う“死神”めいた存在なのかもしれないと想像できる。
純粋な怪異の部分で内容を読むと、さほど珍しい話ではないと思うし(葬儀に見知らぬ霊体を目撃する話は類例がある)、どうも“泣き女”という言葉に幻惑されているだけに過ぎないという印象を持った。
文章はそれなりにこなれており、少々長かったが特に気になるものではなかった。
外国人二人の会話部分のこだわりは特筆ものであったということだけ明記。