【−4】学校の池

何ともリアルさがないストーリーである。
荒唐無稽さは致し方ないとして、夜の学校へ忘れ物を取りに行くという始まりから、明らかに“グレイ”を意識して書かれたあやかしの描写、小学6年生にもなってこれだけとんでもない事態に遭遇しながら「先生……なにやってん?」で済まされる恐怖感のなさ、そして警察沙汰にまでなりながら公式の説明が校長の一言だけ。
あらゆる面でツッコミどころ満載である。
特に事件として警察が動いていて、なおかつ自分自身がその事件に関連して異様な現場に遭遇しているにもかかわらず、その結末に関する情報が殆どないというのは不自然極まりない。
これがもし小学校低学年の子供時代の記憶であれば、辻褄の合わない部分は“覚えていない”で済まされてもやむを得ないところであるが、6年生という年齢を考えるとやはりおかしいと感じる。
むしろ自分が重大な鍵を握っているという心理的緊張感が高まるのが普通のリアクションであろう。
作者が“あったること”に限定して書いているとしても、ここまで現実感に乏しい体験者の言動は納得いかないし、これできちんと書いていると作者が思うようであれば“人間観察者”としてのセンスを疑う。
とにかく怪異の内容よりも、それに遭遇した体験者の方に不自然さを全面的に感じてしまった。
いくら作者が“神の視点”から書いたとしても、やはり生身の人間が体験した事柄としてストーリーを再構築しなければならないと思う。