【＋１】デート

掌編ならではの面白味を出してくれた好作品。
これ以上情報が削られると解らなくなるというギリギリのところまで切り詰めた文章である。
「怪訝そうな顔」という一言で、それまでの情報が全て怪異であったことを示しているのは、なかなかの筆さばきであると思う。
（声に関する情報を全く出さずに最後まで引っ張っているところも、これに関連してよく考え抜かれているところである）
文章については殆ど文句の付けようがない。
ただ残念なのは怪異そのものが非常に小粒である点。
下手をすれば実生活の上でも“空耳”という程度で済まされるレベルの内容である。
多分、体験者もこの直後に「おかしいなぁ」なんとか言ってごまかしているはずであろう。
インパクトのなさだけは、いくら文章技量があるといえども解消できない。
このあたりの評点が妥当だろう。
作品集のように他作品と絡んでくるようになれば、それなりの魅力を発揮できる作品でもあると思う。