【−4】朝礼の前に

体験者の目撃が事実であるという前提がこの大会の絶対条件であるが、この作品に関してはこの条件に抵触するのではないかと思わせるほど際どい内容に感じた。
しかもそのような危うい雰囲気を作りだしたのが、他ならぬ体験者自身のノリの軽さであるからどうしようもない。
人身事故に遭遇し、駅員が血まみれになってバケツを持って走り回っている場面まではそれなりの信憑性があるが、その最後の首無しの男が追いかけてくる段は、周囲の反応と体験者のセリフの軽さ故に、怖がらせるために付け足されたホラのようにしか聞こえない。
小中学校のやんちゃな生徒が女子生徒をおどかすために悪ノリしているイメージなのである(でも20年も勤務しているのだから、この体験者はいい年をしたオッサンなのであるが)。
最後の首とクビを掛けたギャグであるが、純粋にギャグとみなしてもインパクトが弱い。
どうせここまではじけてやるのであれば、「部長、クビだけは…」とか言いつつ、今度は坂本氏が部長を追いかけるような場面で終わらせるぐらいのブラックさが必要だったのでは。
というより、笑いを取ろうとする展開ではなく、シリアスな“あったること”だけで構成した方が怪異が生きたと思う。
シチュエーションとして何とも強烈なインパクトがある怪異だからこそ、グロ怪談に徹すべきだったのではないだろうか。