【−5】ここで

正夢が正夢になる、あるいは予知夢のプライベート版というべき作品。
だが内容があまりにもつまらない。
とりあえず単なるデジャヴ現象で片付けられない内容であり、一つの超常現象であることには間違いない。
ただ、したり顔で語られるのもどうかと思う。
夢に見た通りのシチュエーションになって、自分から正夢通りのセリフを言って正夢を完成させるというのは、何かアンフェアな印象の方が強い。
そこまでの経緯が確率論的にあり得ない状況に近いことは分かるのであるが、どうしても違和感が残る。
また正夢かもしれないと初めに振っておいて本当にそれだけで終わってしまうというのも、人に読んでもらう作品としての価値があるのか疑問である。
だが一番強く思うことは「こんな極私的な正夢ごときで“実話怪談”を称するな」ということである。
極論すれば「いつも晩ご飯にカレーを食いたいと思ったら、本当にカレーになります」と語る体験者を“予知能力がある超能力者”として公の場に紹介するのか、ということである。
体験者本人にすれば凄いことなのかもしれないが、このレベルで怪異と言われても、残念ながら大多数の人間は「違うよ」で終わってしまうだろう。
仮にこれが大事故などの予知夢であれば、それなりの評価になっていたと思う。
そのあたりの“怪異”の定義で完全に外してしまっているので、大減点とさせていただいた。