【−1】ゴミ

インパクト勝負で出してきたと推察するが、中途半端である。
ゴミのあるところから「全身灰色の裸の男の子」が飛び出してきたら実際は驚くかもしれないが、文にしてしまうとそれだけでは何か物足りない。
目撃談なのに描写が足りないという印象なのである。
裸といえども顔立ちや髪型といった描写も可能であるし、飛び出してきた様子や次の瞬間の行動など、たとえ車が動き出していても見ることが出来るものはいくらでもあるだろう。
灰色の裸の子供で十分あやかしであるという判断から書かなかったのか、あるいはそれ以降の事柄を読者の想像に委ねたのかもしれないが、もう一押し必要だったと思うのである。
やはり見えたものにはそれなりにきちんとした描写があってしかるべきであろう。
特にこの作品にあるような突拍子もない存在に対しては、ある意味“お約束”であると思う。
文の長さにこだわって怪異の本質を見失うようでは、本末転倒と指弾されても致し方ないだろう。