【−4】橋の上の出来事

後半部分に言わずもがなのことを書きまくって怪異の印象をぶち壊してしまった。
橋の上で異様な音(これが自転車かどうかは体験者の感性の問題だと思うが)が聞こえたという内容は特に珍しい怪異ではないが、“あったること”としては十分な怪異である。
ところが体験者の解釈があまりにも見当違いの方向に行きすぎている。
まず病院に運ばれる救急患者がこの橋の上でたいてい死んでいるという情報は、一体どのような方法で手に入れたソースなのか。
仮にそれが真実であったとしても、なぜ救急車で運ばれる途中で亡くなった人の霊がその橋の上で異音を立てているのか。
また自動車に引きずられる自転車の音と、なぜ体験者は判断したのか。
これら一連の解釈に納得のいく理由付けは皆無である。
そして一番問題なのは、体験者が語る解釈について作者が無批判で受容して、作品上に書いたという点である。
ここに怪談を書く者としてのセンスに疑問を感じる。
体験者が語った内容を全て記載する義務を作者は有していないわけで、当然、内容の取捨選択権を持っている。
つまり、この作品で体験者が語った解釈を載せたということは、作者自身もこの解釈を正しいと判断したということを意味しているといっても間違いないだろう。
明後日の方向を向いた解釈を記載した段階で、既にこの作品は破綻しているということである。