【＋２】蟻地獄

超−１

とにかく文章による描写が巧いので、ストーリーに入り込みやすい作品であると言える。
体験者の視線から書かれた展開であるが、色々な点でそれを最大限に生かしているという印象である。
内容についても衝撃的な部分はあまりないが、奇怪な体験であることには変わりない。
特に蟻地獄から煙が立ちのぼるだけではなく、それが一つに集合して何かあるものになったという部分に非常に特異な内容を感じる。
結局、何か形あるものに形成されたものがどのような容姿であったのか分からないが、とにかく大人を恐怖のどん底にまで陥れるほどの姿をしていたことだけは分かる。
欲を言えば、その正体を知りたいところなのだが、それは“実話怪談”としては欲張りな要求なのであろう。
ただし完成度の面では、やはり減点の対象とさせていただいた。
（インパクトのある恐怖感を創出させるのには、ダイレクトな形容でなければ効果は薄いと判断する）
全体的には落ち着いた雰囲気で、丁寧に怪異を描写して追体験しやすいという印象である。
とりたてて凄いと思わせるところもないが、手堅くまとめきっていると言えるだろう。
可もなく不可もなくと言ったところである。