【+2】森の遊歩道

多分10年以上前であれば「リアリティがあって、実話っぽい怪談」という好評価で受け入れられたであろう作品である。
初期の実話怪談は大仰なスプラッターホラーのアンチテーゼという存在でもあったから、このような体験者のリアルな恐怖感と些細な怪異という組み合わせに対して賞賛するという傾向があったように記憶する。
言うならば、現在の実話怪談では“生ぬるい”と評さざるを得ないレベルの内容である。
結局この作品もこの範疇から脱し切れていない、良く言えば“古き良き時代”の味わいを持つ内容である。
ただ体験者の恐怖感という点ではなかなかしっかりと書き込まれていると思うし、追体験するには細かすぎるが、読むというレベルでは不足のない内容であるだろう。
問題は怪異がどうしても弱すぎる点。
一応あやかしを目撃しているのであるが、自転車で一気に駆け抜ける部分では体験者の憶測だけで語られており、何か物足りなさを感じてしまう。
文章自体はしっかりとしており、むしろ怪異を表現する上で参考になる点も多いように感じる。
(特に“気付き”の部分などはお手本のような進め方で好評価)
こういう作品を読んでいると、昔と比べて怪談話も過激になってきたな、と個人的に思う次第である。
そういう感慨に耽るところも含めて、若干甘めの評価とさせていただいた。