【+2】監視員

海にまつわる怪談としては、よくあるパターンと言ってもおかしくないほどの内容である。
それ故に、同種のパターンよりもどれだけディテールが詰まっているかが、評価の一番のポイントになるという意見である。
この作品の場合で言えば、やはり水死体のグロさがどこまで表現できているかに尽きるだろう。
結論から言えば、それなりに成功していると言えるが、際立ったところにまでは至っていないと言えるレベルである。
とりあえず水準点にまでは来ている書きぶりであると判断して良いと思う。
ただし“気付き”の部分での整合性に疑問点がある。
救助に来てくれていると思っていた人が実は腐った水死体だったと気付く瞬間なのであるが、これが被害者を沈めようとしたところになっている。
ところがこの水死体は“右の方から”現れたとあり、体験者からは真横に平行移動しているだけなのである。
つまり、被害者の友人のところに辿り着くまでに、波飛沫が立たない以外の異変に体験者が気づかなかったというのが違和感を感じざるを得ない部分なのである(客観的に考えても、少なくとも頭髪は観察出来たと思うし、容易に気付くことが出来たのではないかという印象が強い)。
例えば、登場から襲撃までの時間が10秒程度であるとか、気が動転していたとか、何らかの原因で“見落としていた”というのであれば理解出来るが、そのような記述もないために、意地悪く見れば“話を盛り上げるために故意に隠していた”と邪推されてもおかしくないだろう。
これで怪異そのものが全て破綻するという問題ではないので、若干の減点にとどめることとした。