【+2】のあい

文章全体から醸し出される雰囲気に格調があり、ある意味完成された世界が広がっていると言えるだろう。
常識から突出した怪異を強調するというよりも、世界全体に人知を超えた不思議が存在しており、体験者がたまたまそれに遭遇したと言うべき汎神論的世界観に満ちあふれた内容になっている。
それ故に、日本に古来よりある精神性(霊性)を喚起させる、ナチュラルな流れを基調とした展開であるとも言えるだろう。
しかしながら、怪談のレベルで見た場合、問題点が指摘出来る。
まず体験者が目撃した怪異が今ひとつ分かりにくい。
おそらく最初に“布”という言葉で“一定以上の長さのあるもの”というイメージが提示され、直後に“小柄な人が空を飛ぶ杖に掴ま”ったという表記があるために、そしてそのあやかしが“上空から海へと斜めに滑空し向かっている”ために、目撃したもののスケールが非常に把握しづらいのである。
結局細長い流れ星のようなものだったのか、それともかなり大きな塊状のものだったのか、ある意味どうとでもイメージ出来るような表記であるために、却ってしっくりとこないものがあった。
また体験者の“気付き”の部分があまりにも予定調和的に感じるところがあった。
“喜子はその白いものが何なのかわかっていた”という一文は唐突感があり、それにもまして“見える”人の話にシフトするのではないかという懸念まで起こってしまった。
母子の会話の後に挿入されていれば幾分か違和感も解消されたように思う。
このような怪異の肝の部分でもたつき感があったため、減点とさせていただいた。