【+2】河童

妖怪目撃談としては、なかなかいい作品であると思う。
遠賀川という、さもありなんという地名が書かれているのが特にいい。
この地名だけでも、十分貴重な体験であると言ってもいいかもしれない。
しかし惜しいのは、この目撃された河童があまりにも典型的すぎる容姿であった点である。
作品内での描写説明自体はさほど過不足を感じないのであるが、“全身緑で頭には皿があり、手と足には水掻きが付いていた”という表記はいわゆる辞典に書かれた特徴と完全に一致しており、それが本当に目撃された内容であったとしても、「出来すぎでは?」という穿った見方になってしまう。
このあたりが屈折した怪異マニアの悪い癖と言ってしまえばそれまでであるが、やはり何かしらのディテールが必要であったように感じる(一般化出来る範囲で個別の特徴というものが出てこないと、捏造などの胡散臭さを感じてしまうのは、そのような無差別的な反駁を受け続けてきた系譜故の反応なのかもしれないが)。
目撃したあやかしに対して“河童”という名前を付与し、さらにその容姿の説明があまりにもカテゴライズされているため、作為的とも取れるというのが問題でなのである。
むしろ“河童”という名称を全く出さずに容姿の内容だけが提示されていたならば、読者の側で描写説明を推測して“河童”という名前を導き出して驚きを持って受け入れられていたのではないだろうか。
書き方次第では読み応えのある目撃談になっていたと思う。