【+1】フランネル

最初から“夢である”ということを書いてしまっているために、かなり胡散臭いという印象が先に立ってしまった。
他の“夢オチ”ネタの作品と比べれば覚醒時にしっかりと怪異が発生しているので、ただの思い込みによる怪異であるとは思わないのであるが、それでもマイナスイメージを拭い去るのは至難の業である。
構成としては、やはり“夢”という言葉を冒頭から用いずに、あたかもリアルな体験のように幽霊との遭遇を書いた後に「目が覚めた」というような記述で一旦肩すかしを食らわせたようにして、間髪入れずに“正体不明の布を掴んでいた”というオチを用意した方が、インパクトが強くなったように思う。
少々真っ正直に書きすぎて、損をしていると言えるだろう。
小学生が手にした布の感触から“ネル”であることを直観するわけであるが、不自然と言われればそれまでであるが、個人的にはかなり年輩の方の体験ではないかと推測もしたりする。
最近の若い人の体験であれば“ネル”という言葉はまず出てこないと思うのであるが、一定年齢以上の人であれば、その布の種類はかなり身近な存在であったのではないだろうか(特に着物を着る習慣が残っている時代は結構ポピュラーな存在だったと思う)。
それ故に違和感はあるものの、不自然な反応ではないという判断をさせていただいた。
しかし、のっけから“夢”を提示した展開は、やはり実話怪談ではあまり評価出来ないということである。