【+3】口笛

口笛を吹くあやかしというのもあまり記憶にない。
そのような存在だけでもなかなか珍しいのであるが、展開があまりにも意外すぎる。
まさか体験者もあやかしも意地になって口笛の吹きあいをするとは、ある意味とんでもない“交霊会”である。
この怪異体験だけで十分な秀作であると言えるだろう。
“難しい曲”であるが、具体的な曲名を挙げられたが知らない、あるいはこの程度の曲かと見下す、またこんな曲が吹けるかと嘲笑うなどの危険があるために、このような形で表記したのであろう。
個人的には、その曲がどのようなものであるかよりも、あやかしと対決して勝ったというところが重要であるという意見なので、特に記していなくとも問題ないと思う(知ったからといって、これが何かに有効というわけでもないので)。
作品全体であるが、非常に締まった書きぶりであり、非常に好ましいという印象である(作品の雰囲気にもかなっている)。
特に“難しい曲”の後の2行は的確な描写がなされており、筆力を感じさせる。
ただ最後の体験者の解説は、どちらかと言えば必要なかったのではないだろうか。
個人的には、見事な描写文で“あったること”の余韻を持たせて終わらせた方が印象的だったように思う。