【０】ビードロ

超−１

簡潔にまとめられているのは良いのであるが、要点だけが箇条書きのように提示されているだけで、怪異そのもののディテールに関する描写がほとんど書かれていない状態である。
骨子だけがきれいに並べられているので、舌足らずな部分もなく、いかにも正確な怪異の描写に見えるのであるが、インパクトという点ではかなり弱いように感じる。
ホテルの窓の外に、そしてテレビの画面に複数の霊体が現れているという、想像するにかなり強烈な体験であるにもかかわらず、文章の中からその印象を感じ取ることは難しい。
良いように取れば、“にたぁ”という笑いに恐怖の全てを凝縮しているとも取れるのであるが、体験内容と比べるとかなり矮小化された恐怖であることは間違いないところである。
かといって、複数の霊体が登場する怪異のパターンそのものの記録は、強烈であるにせよ決して希少価値が高いものではなく、そのあらましの提示だけでは評価しづらいのである。
作者としては奇麗にまとめ切れたというところなのかもしれないが、奇麗すぎて引っ掛かるところまでが削ぎ落とされてしまった感は否めない。
どちらかと言えばややグロっぽいという印象のあやかしであるので、もっとディテールを強調して読者に嫌悪感を与えるのも一つの手法だったように思う。