【−2】乗客

一言でいってしまえば、ありきたり。
走行中の車の屋根にあやかしがへばりついているのを目撃するという話は都市伝説をも含めて定番中の定番と言ってもおかしくなく、それだけの目撃談では怪談投稿サイトの中にあったとしてもほとんど読み捨てられるだけの運命にある話であるだろう。
何かひとつでも印象に残るようなディテールがなければ、読者を惹き付ける要素は皆無であると指摘されてもおかしくないし、正直この作品を商業誌レベルで発表したらおそらく編集者は怪談界ではド素人だと言われても致し方ないだろう。
怪異であることは認めるが、いくら巧みに書いたとしてもネタがこれだけではどうしようもない。
マイナス評価としたのは、この程度の目撃談を臆面もなく書き手が公開したことに対するセンスのなさへの評価であることを明言しておく(実話怪談は記録であると共に書き手によって編まれた“作品”だということを忘れてはならない)。
取材した怪異を何のフィルターにもかけず垂れ流すように出すことは一見メリットがあるように見えるが、結局は書き手の取捨選択する眼力が欠如していることをひけらかすことになるということで(個人的には文章の拙さでマイナス評価を下すこともあるので、当然ネタの選択能力不足はマイナス評価の対象である)。