【+3】まんめいさま

出来ればどこの地方なのか、またいつ頃の話なのかが書かれてあれば、なお一層記録として完備された内容になっていただろう。
その点を除けば、しっかりと怪異の経緯についても書かれており、神様の霊験に対する畏怖の気持ちも作品中から見て取れる、なかなか良い作品であると言える。
“まんめいさま”という名前ですぐにピンとくるものはないが、歯痛治癒のために神社から箸をいただくというのは京都の某社でもおこなわれているので、まんざら出鱈目な信仰ではないと思うし、そのあたりのディテールが信憑性の裏打ちとして書かれてあるのは好印象である。
肝の怪異であるが、こちらの方も屋内の情景が細かく示されており、本人が異界(パラレルワールド)にはまりこんでしまったのか、あるいは実体を失ったまま家に帰り着いてしまったのか、そのあたりの原因は分からないが、体験者の全くの幻覚であるとは言い難い説得力のある描写が展開出来ていたと思う。
評価としては、希少の高い内容をディテールを交えて丁寧に書いている分だけ高評価ということで。