【0】鏡

都市伝説的に流布している、特に“学校の怪談”よろしく子供の間でまことしやかに噂されている怪異を実際に検証したら、本当に起こってしまったという内容である。
言うまでもなく、そのような怪異が起きてしまった経緯の発端から非常に胡散臭い雰囲気がどうしても拭いきれないというのが本音であり、客観的な分析をする以前に何かしらの不審の念がつきまとってしまう。
この傾向だけは都市伝説の内容に限りなく近い展開であればあるほど感じてしまうところであり(こういうものに詳しい人間の方が概してこの悪癖があるので、ある意味申し訳ないとも思うのだが)、それを打破するだけの客観的なディテールが必要であると思うのである。
この作品で言えば、回を追うごとに緊迫する感情面でのディテールは細かいと感じるのであるが、部屋の状況であるとか、回数の数え方(何かに記録を付けたのか声を出して数えたのかなどの具体的な方法)など、体験者でしかわからない物証の点で情報が不足しているという印象が残った。
幼少期の記憶、しかも都市伝説にまつわる記憶という場合、通り一遍の事実の羅列だけではどうしても信憑性の弱さをカバーすることは難しいと言えるだろう。
読者をもハッとさせるような記憶のディテールがどこかに欲しかったというのが、正直なところである。