【+2】職務の果て

書き手の“書く目的意識”がはっきりしており、またそれに従ってストーリーが展開しているために、非常に分かりやすい内容になっていると思う。
そして努めて冷静な筆致ではあるが、霊に対する抑えきることの出来ない畏敬の念が末尾部分に集中して書かれており、静謐さを伴う感動にあふれている。
いわゆる殉職という形で亡くなった方の霊は最期までその任務を遂行しようとした分、その責任感故に強い念を持ってこの世に残ると言われており、体験者同様書き手もその無念の気持ちを作品内で提示することで死者に対して報いようとしていることが理解できるため、読んでいて非常に気持ちの良いものを感じた。
ただし、冒頭部分の火事に関するエピソードはやや冗長という感もあり、ここまでの情報は必要なかったように思う(おそらく書き手が冷静に書こうとするあまり事細かに書いてしまった感もなきにしもあらずである)。
書き手が読者に伝えたい内容が明確であればあるほど、展開の精度が間違いなく上がるというお手本のような作品であると思う。
ネタとしてはさほど強烈というわけではないが、心を揺さぶるものを持つ良い作品と言えるだろう。