【+1】残骸

戦地の怪談の希少性については以前からかなり声を大にして主張しているのであるが、さすがにここまでベタなネタでは希少性といってもかなり厳しいという意見である。
また作品の構成自体が、戦局についての説明から怪異の顛末までが全てフォーマットに従って書かれたのではないかと思わせるほど典型的なパターンであるため、デジャヴ感覚に陥ってしまうほどであった。
間違いなく敵兵(おそらくイギリス軍)の霊が戦車の残骸と共に残ってしまって日本軍に対して恨みを晴らそうとしているという内容であり、その点ではかなり珍しい怪異であるのだが、いかんせん展開があまりにもベタなために“どこかで見たような話”に見えてしまったのが難点である。
“戦争怪談”ということであまりオチャラケた書き方も出来ず、切り口を変えて書くことも難しいので、結局ベタベタのままのパターン(構成から文体まで全てを含む)で王道を貫いたので正解という気もする。
プラス評価についてはまさに戦争体験者の怪談ということに尽きるわけで、実際は本当に可もなく不可もなくというレベルでちんまりと収まっていると言える怪談である。