【+1】徹底した拒絶

不可解な足の怪我といい、突然の火災といい、何かあるという思わせぶりの高い事実が並べられているのであるが、これが怪異であるという決定的な確信を持たせるだけのキーポイントが明確ではなかったという印象である。
一番強く感じたのは“凶宅ネタ”であるにもかかわらず、その家の持っている禍々しい印象をほとんど文章中で感じ取ることが出来なかった点である。
凶宅と呼ばれる家については、人が住んでいようがいまいが、その曰く因縁なりまたその家の持っている異様な雰囲気というものがこれでもかと書き込まれていることが普通である。
言うならば、凶宅が凶宅である所以がきちんと書かれて初めて凶宅足りうるだけの風格を持つのである。
ところが、この作品では体験者の行動は手に取るように書かれているのであるが、家そのものについての記述が非常に少なく、焦点が家に当たっていないと言われても仕方がないようなほどである。
このような状況で、タイトルにあるように家が意思を持って拒絶していると主張されても、何となくピントがあっていないという印象しか残らない。
家が焼失してしまったことについても、禍々しい意思というよりは、偶然の事故ではないかという思いの方が先に出てきてしまうほどであった。
“あったること”についての記述については何の落ち度もないのだが、ただ全体の雰囲気作りの部分で書き手の意図するところに持ち込むことがかなわなかったために、何となく怪異が上滑りしてしまった感が強いと言えるだろう。