2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧
“見える人”であるが故に余計な恐怖にさいなまれてしまう典型的なパターンである。 体験者自身が霊に襲われることもなく、最後まで傍観者の立場に立ったままの体験にもかかわらず、非常に恐ろしい印象を与えることに成功している。 冒頭で体験者が霊に対して…
タイトルを初めに見た時は「?」だったが、内容を読んで納得した(ただし“ほと”はほぼ古語に近い言葉だから、ちょっと凝りすぎという気がする)。 カテゴリーとしては“下ネタ系”に入るので、何ともいいようがないが、大変希少な現象であることは間違いないと…
それぞれの部屋で起こった怪異だけがバラバラで出てくれば、本当に取るに足りない怪異譚で済まされてしまうのだが、1フロアで同時に起こり、しかもそれが各パーツごとに順序よく並んで登場するところにこの話の面白さがある。 また怪異の肝に当たる部分を、…
用を足している最中に怪異に遭遇するのもたまらないが、用を足そうとする場所にあやかしがいるのも相当おっかない話である。 この作品の問題点は、体験者が遭遇したあやかしの様子がかなり大雑把な表記で終わってしまっているところである。 一瞬の出来事で…
ほぼ完璧な妖怪体験談である。 体験そのものの内容が非常に詳細であり、また過不足ない表記で描写されているために読みやすい。 特に鎌鼬の存在に気付いてから襲われるまでの数瞬間の動きの流れは、簡潔でありながらも的確にポイントを押さえた描写になって…
ここに書かれた現象であるが、多分“土地の記憶”というものが、かつてここで遊んでいた人間によって触発されて写真に写り込んでしまったと解釈したらいいのかもしれない。 公園で遊んでいた子供だけではなく、そこにあった遊具までが写り込んでいるのだから、…
この作品も、体験者の言うままを書いてしまったためにせっかくの余韻が弱くなってしまったと思う。 前半部分の白無垢の花嫁のあやかしは強烈であり、情け容赦なく迫ってくる描写はまさに恐怖を凝縮した感があると言ってもおかしくない(描写部分に少々わかり…
怪談の書き手は、プロであろうとアマチュアであろうと、一通りの怪談の知識を擁していなければならないと思うし、怪異に対する敏感な嗅覚を持っていなくてはならないと思う。 例えば、体験者が語る内容についてそれを全て信じてきちんと聞き止める力も絶対的…
高速道路をはじめ様々な道路に出没する“車を追い抜くあやかし”の目撃談である。 これもありとあらゆるパターンが報告され、そしてフィクションとしての「都市伝説」にまで強烈なキャラクターとして登場しているために、陳腐さから脱することは非常に難しいだ…
“見える”体質の人で、能力的に高いものがない場合、憑依されるケースというのがよくあると聞く。 この旦那さんもそういう部類の人であり、しかもそれをある程度自覚しているのだが、それでもやはり憑かれてしまうわけである。 そこで見つけたのが“御神酒をい…
怪異としてはそれほど珍しいものでもなく、また内容自体も小粒という感じである。 可もなく不可もなくと言うところであるだろう。 気になったのは、最後に書かれた体験者の意見である。 個人的には、このコメントは不必要というところである。 “邪な妄想”か…
タイトルと“兵隊さん”という言葉から、おそらく先の大戦で亡くなった英霊がまだ浮かばれていないということを示したかったと推測する。 しかしあまりにも凝りすぎてしまったために、却って本質となるべき怪異が希薄なものとなってしまっている。 もっと厳し…
怪異が起こるプロセスからその結末まで、とにかく良い意味で不快感を伴う“厭系”の怪談である。 特に霊が見せる強烈なグロのシーンと、体験者の身に起こった異変の生理的な薄気味悪さとが相まって、とにかく苦々しくて吐き気を催しそうになるほどの厭さ加減が…
語り部口調のメリットというものを考えた場合、“臨場感”と“親近感(感情の共有)”が挙げられるだろう。 体験者自身が遭遇した怪異に対して恐怖におののき、そして感情の高ぶりを表現する時、語りの口調は最大限に活かされることが多い。 そして恐怖以外のあ…
怪異のネタとしては、辛うじて怪異とわかるレベルであり、また単なる目撃談でしかなくありきたりという評価しかできない。 正直に言えば、ネタだけの評点としてはマイナスでもおかしくないという印象である。 しかし、それを補って余りあるのが文章技巧であ…
多くの者が霊体験をしているにもかかわらず、自分一人だけがそういうものに遭遇することなく、むしろ避けられているかのごとき状態であることが明瞭にわかる。 この話の肝部分は小粒ながら非常に興味ある内容であると思うし、その部分をしっかりと怪異の本質…
怪異のレベルとしてはかなりきついものという印象なのであるが、文章表記がバタバタとしていて、とにかく読みづらい。 描写を中心にしてストーリーを組み立てている点はいいのだが、その描写があまりにも細かく刻まれ連続してくるために、悪い意味で隙間なく…
まさに「現代民話」、古き良き時代の“あったること”を記録するという意図が明確に表れた作品であると思う。 起こった怪異についても“天空に月が二つ”という、古典的とも言える“化かされ話”のカテゴリーの直球ど真ん中の内容である。 あまりにも典型的すぎる…
小粒な“投げっぱなし怪談”という印象である。 怪異の内容から考えてこの形態にしたのは賢明であると思うし、書き手自身が怪異の本質を掴んでいると判断出来るところである。 だがどうしても見過ごせないのが、最後の“風に吹かれた紙の様にパタタタタ、と激し…
かなり珍しいあやかしの目撃談だと思うが、結局目撃談のみの展開で十分であるにも拘わらず、悪い思わせぶりの要素を取りつけてしまっている。 体験者の母親のことが書かれているのであるが、これが単なる自慢話の域を出ない内容になってしまっている。 “見え…
冒頭に出された体験者のキャラクター作りから(基本的には体験者のキャラクターは不必要なのであるが、この作品の場合はこれがあってこそ体験談が活きるので、必然性が十分感じられる)、怪異におけるオノマトペ、体験者の反応やコメントなど、どれをとって…
怪異の部分の描写が非常に丁寧で、“あったること”としての説明としては十分という感想である。 また犬猫あたりの動物でこのような現象があったことは聞いた覚えがあるが、鳥類ではほとんど記憶にないので珍しい話であると思う。 ただこの手の“動物ネタ”の悪…
目撃した怪異についてはかなり希少という感じがするが、そのあやかしを提示するスタイルが凝りすぎて、何か作り物っぽい印象になってしまっている。 体験者とアイドルとの関係や、出現した膜の妥当性のある理由など、このあやかしの本質に直結する内容を推察…
ほぼ“投げっぱなし怪談”の体裁を取っているというべき構成の作品である。 ただし一撃必殺の投げっぱなし技ではなく、これだけ短いにもかかわらず連続で畳みかけてくる力の強さも持ち合わせている。 最後の部分の<ぎょろりとした目→上下逆さ→一人暮らしの部…
かなりあやしい怪異でありその一部始終がきっちりと書かれているため、突拍子もないような場面であるが、おおよそイメージすることができた。 小型冷蔵庫にスッポリと収まる女の首というのはかなり強烈なインパクトがあり、一旦は扉を閉めて逃げおおせたと思…
怪異について取材して文章を書き起こす時、怪異が発生したという報告が出てくることがよくある。 最近の怪談本ではまえがきかあとがきに編集中に起こった怪異を書かなければ、強烈な実話怪談本ではないと思われているような風潮があるぐらいである。 (ちな…
“硫黄島”という言葉が心霊マニアの中でどれだけの価値を持っているかを知っているならば、この評点は当然の帰結である。 むしろ、この評点は減点した上での結果であることを明言しておきたい。 それだけ硫黄島の怪異は凄まじく、そして滅多なことで体験でき…
不思議なものの目撃談というものは実際このぐらいあっさりとした内容であると思うので、作品そのものはそれなりにまとまっているだろう。 ただその中で減点にした理由であるが、“びゅん”という表記が全てである。 体験者は、このあやかしが“5センチほどの大…
ストーリーの展開のさせ方がドラマっぽいのであるが、独特の雰囲気があり、またそれがこの業界のドロドロとした人間関係に合っているので、どちらかというと読ませてくれるという印象である。 まだ文章そのものの疎密さにムラがある(非常に細やかな描写にな…
水溜まりを覗き込むと自分以外の人の姿が見えるというのは、なかなか不思議でもあり、また気味の悪いものである。 霊体を映し出すもの(逆のパターンも多く存在するが)として鏡があるが、間違いなくそれと全く同じ現象をその水溜まりが果たしたことになった…