【+4】硫黄島奇譚

硫黄島”という言葉が心霊マニアの中でどれだけの価値を持っているかを知っているならば、この評点は当然の帰結である。
むしろ、この評点は減点した上での結果であることを明言しておきたい。
それだけ硫黄島の怪異は凄まじく、そして滅多なことで体験できるような代物ではないということである(廃墟侵入が違法とかいうレベルではない。硫黄島にたどり着くことすら一般人では不可能なのである。だからこそ希少性で言えば、無条件で最高評価をするしかないのである)。
硫黄島関連の怪異は今まで自衛官のみの証言しか確認しておらず、民間人(施設工事などでまれに訪れることがあるとのこと)による証言は記憶する限り初めてである。
しかも記録されている内容が非常に凄まじい。
あれもこれも詰め込みすぎて焦点がぼやけてしまった感があるが(これが唯一の減点対象である)、漏れ伝え聞く怪異と内容的に合致する点も多々あり、尋常ならざる世界が展開していることは十分わかるレベルである。
特に地下壕の写真や、生身の人間を連れ回す日本兵の霊などは、圧倒的なインパクトを与えてくれる。
結構淡々とした書きぶりなのであるが、やはりそれでも読者にとって衝撃的であることは間違いないところである。
硫黄島の特殊性を考えると、その島の来歴について語らなければならないし(我々の先達たちが辿ってきた歴史を再確認することは“伝承”を継承する者にとっては必要不可欠である)、普段見聞することすらままならぬ場所での生活なども記録してこそリアリティーがあるというものである。
ただそういう点も考慮に入れた上で、やはり怪談として盛り上がりのあるエピソードを作り出すべきだったと思う(少々長くなったとしても、日本兵に連れ去られた男の話を核と据えて書き込むべきだっただろうし、十分できるだけの情報はあると思う)。