【−2】42

起こっている怪異については、申し分ないほど充実した(?)内容になっている。
42についての符丁も単なる偶然では済まされないほどの回数になっているので、小粒ながら怪異であると認識出来るレベルにまでなっていると思うし、壁から出てくる血も目の錯覚と言ってはいけないと思える。
それ故にこれから先どうなるのかと期待させておきながら、結局決定打は不発のまま。
しかもその不発となった原因が“見える人”からの忠告一つでは、さすがに竜頭蛇尾の感は否めない。
問題なのは不発に終わってしまったこと自体ではなく、不発に至った経緯がそれまでの我慢に我慢を重ねて体験してきた事実とあまりにもギャップがありすぎて、読んでいる側からすれば拍子抜け以外の何ものでもなかったというところである。
事実だから致し方ないという気もしないでもないが、だがこれを怪談話として取り上げると書き手が決めた以上は責任を持って怪談として成立させる義務があると思う。
この作品の構成では、怪異の報告としては正しいかもしれないが、読者に読ませる怪談話としては中途半端、とりわけこのような拍子抜けしてしまうような結末では“作品”としてお粗末すぎる。
少なくともこのエピソードを話の中に登場させようと試みるならば、引っ越しを決意させるだけの強烈なものの存在を書かなければならなかっただろうし、それがはっきりしないようであれば引っ越しした事実だけ書いてその理由を書くべきではなかったと思う。
馬鹿正直にありのままを書いて怪異の面白味を削ぐようでは何のための怪談なのか、そのあたりは書き手のセンスの問題ということになるだろう。