【−6】巣くわれて

結論から言ってしまうと、この作品には超常的な怪異と認められる内容が全くない。
同じ通りに面していても繁盛している店もあれば、そうでない店もある(しかも小売販売店と飲食店という異なるカテゴリーの店で単純比較されてもピンとくるものが全然ない)。
そして当然繁盛しない店が畳んだ後にできた店もそのような運命を辿るケースの方が圧倒的に多い。
だがそのような現象があるからと言って、それの原因が一概に超常的な怪異であるとは思えないし、この作品のケースでもそれに類する事柄は一切記載されていない。
ただある一角だけは店を出してもすぐに畳んでしまうという事実が書かれているだけである。
そしてその事実だけでさも意味ありげに“閑古鳥が鳴いて巣を作り続けているようなのだ”と書いているが、これはあくまでも比喩であって、これが怪異の原因だと書き手が真剣に思っているならば噴飯物以外の何ものでもない。
最低限度その土地で怪異が起こってもおかしくないような事件があったとか、そういう取材事実があってこそ初めて怪異の存在を考えてもいいだろうが(それでもこれだけでは単なる噂の域なのできついマイナス評価である)、この作品内の事実関係で真っ先に怪異を思いつく方が相当おかしな発想であると感じる。
全くの取材不足であるし(内容から読みとるとおそらく調査・取材の類は一切していないのではないか)、しかも常識的判断からかなりずれた憶測で話を進めている点など、怪談以前の問題ばかりが目についてしまった。