【０】お粗末な幽体離脱

怪談話の作品というよりも、エッセイに近いレポートという感じがした。
特に最後の部分で自分の感想や思いというものを読者に伝えることの方が主眼となっていると判断出来るので、そういう印象を受けたのだと思う。
ただ、やはり“幽体離脱ネタ”ということで、余程の内容でなければ評価を高くすることが出来ないと思うし、幽体離脱の内容としては希少価値のあるもの（体験者自身は“お粗末”と書いているが、特殊事例という判断の方が正しい評価であるという意見である）ではあるが、総合的な評価としては可もなく不可もなくというラインにとどまるものであるだろう。
幽体離脱の意味内容を冒頭に持ってきている点、またその意味説明から自分の体験を芳しくないものとみなしている点などから判断すると、体験者＝書き手はまだこの怪談世界にドップリと浸かり込んでいる人種ではないように感じる。
その部分は、自分の体験した怪異に対して猛烈な好奇心を示していることが手に取るように解る文章にも表れている。
その点で言えば、凄く瑞々しい感性で書かれた作品という印象であり、非常に好ましい印象を持って読ませていただいた（評価とは別に特記すべきということで）。
怪談作品としては少々違和感の残る部分もあるが、特に評点を下げる理由にはならない程度だろう。