【0】訴え

お墓に異変があると、先祖の霊が現れたりして家人に気付いてもらおうとする怪異が時折報告される。
この作品の怪異もその種類のものであり、取りたてて希少な内容であるものとまでは言えないレベルの怪異であるとだろう。
また霊体が家人とは別の人間に訴えかけるというケースはよくあることであり、例えば自分が殺されて埋められたことを全く見ず知らずの人間に夢の中で訴えて、実際に遺体発見に辿り着いたという話もあるほどである。
それを思えば、隣家の知り合いの霊体が訴えに現れてもおかしくないだろう。
これらの類話の頻度を考えると、とりわけ珍しいと言えるような怪異ではないという判断である。
また文章に関しても、すんなりと入ってこない言い回しが若干あるが、おおむね大過なく読めるというレベルである。
結論としては、可もなく不可もなく読める作品であり、ごくごく普通の怪談話というところになるだろう。