【+1】鈴

家を守護する神によって救われた典型的なパターンであり、なかなか希少な体験談であると思う。
タイトルと冒頭の説明からおおよその展開は把握できたが、だからといって陳腐な内容とは言えないし、同じパターンだから面白くないという感想もない。
この種の奇譚だけは、酷似すればするほど“神の存在”というものを感じざるを得ないし、似ているからこその説得力があることも確かである。
だから、危難から救われて、神様から授かったものが壊れるという展開がマンネリであるとは決して思わない。
ただしこの作品の場合、問題があると思われるのは、神の加護と同等に不思議な危難があるにもかかわらず、それがあまりしっかりと書かれていないという点である。
死に神の鎌”が写っている心霊写真という、非常に珍しい写真についてもっと詳しい情報が欲しいわけである。
また階段での怪異についてももっと周辺状況など、読者としてはもっと知りたい内容がいくつもある。
鈴が真っ二つに割れたという事実と同じぐらい奇怪な出来事がいくつも生じているのに、その部分がかなり適当になってしまっていると感じるのである。
奇瑞にのみ焦点を当てすぎたために、その他の怪異に関する記述が弱くなりすぎたという印象なのである。
奇怪なことが立て続けに起こったために、書き手自身がそれを文章で完全に処理できなかった(要は削りすぎの感が強い)のではないかと思ったりもする。
少々文章が長くなっても構わないので、そのあたりの情報を加えた方が、もっと劇的な奇譚になって良かったように感じる。