【−1】支えてくれた

ドッペルゲンガー(分身体)のまつわる怪異としては、かなり希少なエピソードであると言える。
何を言っても、自分の分身体と直接接触したという事実は、凄く貴重な報告である。
だが、これだけ貴重な内容にもかかわらず、分身体との接触の具体的な状況描写が非常に曖昧なのである。
体験者が階段から落ちそうになっている体勢と、分身体が左腕を掴んだ時の体勢とがどういう立ち位置になっているのかが明確ではない。
そのために何か不自然な位置関係になっているのではないかという疑念もある。
さらに奇異に感じるのは、分身体が掴んだ左腕に抱えられている子供についての記述が全然ない点である。
目撃証言を得るのは難しいとして、怪異が起こった瞬間の子供の様子であるとか、リアクションであるとかが書かれて然るべきにもかかわらず、あたかも誰も抱えていないかのような記述には不審に近いものを感じる。
やはり怪異の肝部分で混乱しそうな表記に出くわすと、リアリティーの問題を感じざるを得ないところである。
総合的に判断して、悪い部分の方が強く出ているという印象があるので、マイナス評価とさせていただいた。