【０】縁日にて

怪異の内容を考えると、果たしてこの書き方がよいのかどうか若干疑問が残る。
構成としてはいわゆる“怪談のフォーマット”、体験者の語りの文と、説明描写の地の文を繰り返しながら展開する書き方である。
それなりのネタであれば、時系列的に起こった出来事を順序よく書いていけば、何となく怪談らしい内容になるパターンである。
しかし怪異の内容が一瞬の目撃談である場合、このフォーマットで書くと冗長な内容に堕する危険性がある。
この作品の場合も、前半部分は怪異とはほとんど関係のない内容が並び、しかも怪異は一瞬で終わるという感じになってしまっている。
このネタであれば“投げっぱなし”怪談で十分語り尽くせるのではないだろうか。
むしろその方が、怪異の本質に合っていると感じるし、怪異のインパクトもそれなりに出たと思う。
ただしこれによってマイナス評価にするほどの程度のものでもなく、怪異そのものも可もなく不可もなくというところなので、最終的にはそれなりのところである。